皆様、こんにちは。

1 イントロ

 今回は面会交流が認められた事例をご紹介します。

2 事案の概要

 X(父)は外国籍であり、短期滞在の資格で来日して、2度の婚姻を経てY(母)と知り合い婚姻したところ二人の間の子Aが生まれました。

 しかし、婚姻した翌年にはXとYは別居を開始し、Aの親権者をYと定めて離婚に至りました。その後、XはAとの面会を求めて調停を申し立てたところ、調停は不成立となって審判に移行し、3カ月に1回Aの写真3枚を送付すること及びXがAにクリスマス及び誕生日カード及びプレゼントを送付することを妨げてはならない旨の審判が下されて確定しました。

 ところが、Xは違法残留となってしまったため、在留特別許可を求めましたが、強制退去命令が発せられてしまいました。Xは強制退去命令の取り消しの訴えを提起するも、請求棄却となりました。

 Xは収容から仮放免された後に再度の面会交流調停を申し立て、直接の面会を求めました。しかし、当該調停も不成立に終わって審判に移行したところ、XとAの直接の面会交流は認められなかったため、Xは抗告を行ったのが本件です。

3 抗告審の概要(大阪高裁平成21年1月16日決定)

 抗告審ではXとAの直接の面会が認められました。

 裁判所は子Aが父であるXへの愛着を感じるようになったこと、自己の父の存在を認識し愛されてきたことを知ることが子の心情の成長に重要であるあるという考えに立ちました。その上で、仮に父が強制退去になったとしても手紙等の交換を通じての間接的な交流が続けば親子間の交流は可能であることを踏まえて、現時点でXとAの直接の面会交流を開始する必要性があるとして、3カ月に1回の直接の面会交流を認めたのです。

4 まとめ

 面会交流を求める場合、裁判所の手続は第1次的には調停を行うことになりますが、当事者双方に折り合いがつかなければ審判手続に移行します。審判では審判官(裁判官のことです。)が結論を決めてしまうのですが、必ずしも直接の面会を認められるとは限りません。

 審判に不服がある場合には本件のように抗告することができますが、結論が覆るケースは全体としてはあまり多くはないのではないかと思われます。

 ただ、本件で最終的に直接の面会が認められたのは、1回目の面会交流審判に基づいてXがA宛てにクリスマスカードを送る等の間接的な交流が続けられたこと、Aが当初は父(X)の存在を全く知らなかったこと、といった事情から父子間の交流の必要性と前向きに交流が続けられる可能性を見いだせたからではないかと思います。Y側もどうしても面会をするのであれば付き添いを希望すると述べていたようであり、全く譲歩ができないというわけでもなかったようです。

 結局のところ、面会交流は国籍うんぬんと言うよりも、子の成長に意義があるか否か、父母間で継続的な面会交流ができる土壌がありそうか否かが重視されています。できそうであるなら面会を極力させてあげるのが、最近の裁判所のスタンスなのですが、他方で、できなさそうな場合、特に父母間の対立が激しくて協力できそうもないケースでどうやって面会を実現させるかについては打開策を見出すことが難しいように思います。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。