皆様、こんにちは。

 平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下、「DV防止法」といいます。)が制定・施行され、DVについての認識も広まっていると思われる今日ですが、今回は、DVが離婚原因なった場合における面会交流権の制限や方法について列挙的にみてみたいと思います。

 仮に、夫のDVを原因として離婚したというケースでみてみましょう。

 まず、面会交流を制限する方法として次の2つがあります。

 1つは、当ブログでも以前審判例が紹介されていましたが、元妻が申立人となって子供の父親である前夫と子供の面会交流を禁ずるという審判を、家庭裁判所に申し立てるという方法です。

 以前当ブログで紹介されたのものとは別の審判例としては、東京家審判平14.5.21が挙げられます。事案はDVにより元妻がPTSDと診断されたというもので、面会交流を実行すると親子、母子3人の生活の安定を害し、子供の福祉を著しく害すると判断されたものです。

 もう1つは、DV防止法10条1項1号に基づいて、申立人である元妻本人への接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)を申立てるとともに、元妻への接近禁止命令と同時又は追加的に発令される子への接近禁止命令(同法10条3項)の申立てをも地方裁判所にする方法です。

 元妻及び子への接近禁止命令の効力が生じた日から6か月間、元妻と子供の住居その他の場所においてその身辺に付きまとったり、子供の就学先その他通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁じられます。命令に違反した場合には、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金。同法29条)が課されることになります。

 次に、DVであったことから、元妻が自分の住所を秘匿しているような場合に、子供と元夫の面会交流を図る場合として、当事者の親族や弁護士、FPIC等のNPO法人の協力を得ることにより実現する方法があります。

 FPICについては、当ブログでも以前紹介されていましたが、正式名称は「家庭問題情報センター」といい、家庭問題に関する相談、(有料ではありますが)面会交流の援助、後見等の受任、調停、セミナー等を通じて健全な家庭の育成に寄与貢献することを目的として活動しています。現在は、家事調停委員等が特別会員として参加するようになり、家族関係調整の専門家集団として活動しているといえます。

 面会交流権は離婚後、親権者若しくは監護権者とならなかった親がその未成年子と面接、交渉する権利であり、未成年子の福祉を害することがない限り、認められる権利といえますが、相手方との面会交流を認めることについて何らかの不安がある場合には、上記のような第3者の力を借り安心して面会交流を実現する方法も検討されるとよいと思われます。

弁護士 髙井健一