皆さんこんにちは。

 前々回(1月17日)、婚姻成立後、夫婦間にはどのような法律が生じるかを紹介しました。具体的には、①夫婦の同氏、②同居義務・協力扶助義務、③貞操義務、④夫婦間の契約取消権でしたね。

 今回は②同居義務・協力扶助義務のなかの同居義務についてより深く検討していきたいと思います。

 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法752条)。民法はこのように定めて、夫婦には同居義務があることを明言しています。同居は婚姻の本質であると考えられており、多くの人にとって夫婦が同居することは当然のことと考えられていると思います。

 ただ、夫婦の職業上の理由(たとえば単身赴任など)から別居生活をせざるを得なくなることもあると思います。このような場合は、夫婦が事実として別居しているだけで同居義務違反が生じるわけではないとするのが一般的な考え方です。

 それでは、正当な理由のない同居拒否に対して、法的にはどのような対抗手段をとることができるのでしょうか。同居の拒否にたいして一方当事者は、同居の審判をもとめることができます。また、同居義務違反に対しては、損害賠償請求が可能となり、悪意の遺棄(民法770条1項2号)や婚姻を継続しがたい重大な事由(民法770条1項5号)として離婚原因にもなりえます。

 しかし、同居義務違反をする当事者が、審判に応じず、損害賠償請求されても同居義務違反をする場合、直接的な履行の強制ができるのでしょうか。

 この点について、直接な強制はできないというのが固まった結論です。確かに、無理矢理同居を実現させても、すぐに再び同居を解消してしまいそうですしね。それでは、同居義務違反をする当事者に対して、同居義務違反をする人に対して、「履行しなければ1日につき○○円払え」という一種の罰金を科して履行を経済的に強制する方法(間接強制と呼ばれます)をとることができるのでしょうか。この点についても、同居するか否かはまさに人格に関する事項であり間接強制になじまず、間接強制もできないとされ、これも固まった結論とされています。

 ただ、同居義務は婚姻の本質的な要素だと明言しているなら、婚姻して共同生活を送ると決めた人にとってそれを間接的に強制することは決してその人の人格権まで否定することにはならず、間接強制を認める余地もあるのではないかと思うのですが、みなさんはどのように考えるでしょうか。休みの日に少し考えてみるのも面白いかもしれませんね。

 それでは、また。

参考文献(「民法親族・相続」(第2版)松川正毅)

弁護士 福永聡