離婚に際し、一度合意の成った養育費負担額であっても、当初予測のできなかった事情の変更がある場合には、額を増減させることができます(民法880条)。金額の変更は、当事者間協議か家事調停、家事審判で行われます。
当初予測のできなかった事情の変更の例としては、急なリストラや栄転などの予想を超える収入の変動や、子について進学費用や傷病の治療費などの多額の出費を要する事態が生じた場合などがあります。そして、これらに並ぶ例として、再婚などによる扶養関係の変動があります。
今回は、義務者が再婚して、扶養家族が増えた場合を取り上げようと思います。再婚すれば新しい配偶者が、再婚相手との間に子が生まれれば新しい実子が、再婚相手の連れ子と養子縁組を結べば彼らも、扶養すべき対象となります。この場合、先の離婚時に合意した養育費額(特に算定表に従って金額を定めた場合)のままだと、養育費の負担が重くのしかかって新しい扶養家族の面倒を十分に見ることができなくなります。そのため、再婚に伴い義務者が有することとなった扶養対象者の間で収入を公平に分配するために、養育費の減額再計算が必要となります。
さて、再計算とはいっても、どのような算定方法で新しい適正額を定めればよいのでしょうか。これにはいくつかの方法が考えられているようです。
まずは、義務者の新しい家庭に従来の子が同居すると仮定して、従来の子にかかる生活費を算定し、双方の基礎収入額で按分する方法です。このとき、再婚相手の生活指数については、100ではなく55で計算します。婚費分担の場合に配偶者の生活指数が100となるのは、義務者と別世帯のためであり、再婚相手は同居していることから、そこまで費用を要さないということのようです。
他には、再婚に伴い増えた扶養家族の人数に従来の子の人数を加算した数字を分母とし、従来の子の人数を分子として、それまでの養育費額に乗じるという方法もあるようです。
また、義務者と権利者がそれぞれ子を監護する場合と同様の計算で、適正額を算定する方法も考えられます。先日は、東京家裁はこの方法に依って計算を行なっていると聞かされましたが、真偽は不明です。
なお、養育費の減額は「当初予測のできなかった事情の変更」がある場合に認められます。例えば、不貞相手と再婚するために離婚する場合で、不貞相手は離婚時に妊娠がはっきりしており、連れ子もいることが分かっているような場合、再婚に伴う扶養義務の発生を見越してなお、その養育費負担額に合意したと解されて、後の減額は認められないかもしれません。