事務員A「あれ? 先生、ブログの親権獲得講座やめたんですか??」

太田「年が明けたので、気分を変えようと思って。」

「本当はネタ切れだったんじゃないですか?」

太田「・・・。」

「それはさておき、弁護士法人ALGの離婚ブログにはだいじな記事がありませんね。」

太田「何ですか? 早速ブログネタにします!」

「(やはりネタ切れか・・・)離婚といえば離婚届です。正しい離婚届の書き方が分からない人もいるんじゃないかなあと。」

太田「いやいや、どこを悩むんですか。離婚届に印刷してある通り記入していけば受理されますよ。」

「単なる離婚届の書き方じゃないんです。『正しい』離婚届の出し方があるんじゃないですか? 弁護士法人ALGのブログを見ていただいている方には、せっかくだから正しく離婚届を出してほしいです!」

太田「う~ん、そんな需要がどこにあるのかよく分かりませんが、一応書いてみましょうか。ちなみに、離婚届は24時間365日提出できるのを知ってましたか。」

「え、婚姻届はいつでも出せるって聞いたことがありますけど。」

太田「離婚届も出せるんですよ。あとは死亡届と埋火葬許可書ですかね。もっとも、昔ですが、本当にいつでも離婚届が出せるのか某市役所に聞いてみたところ、『できたら事前にいつ来られるのかお電話いただきたいですね~』と言われました。あと、『戸籍に詳しい者が当直勤務しているとは限らないので、不備があったら後日また来ていただくことになります』と言われました。」

「コンビニのようにはいかないということですね。」

太田「たしかに戸籍係が常に夜間・休日もいるわけではないので。もっとも、仕事などで平日の日中に役所に行けない人には便利な制度だと思いますよ。もっというと、離婚届は郵送でも受理されます。詳しくは提出する役所のホームページを見るか、電話で戸籍係に聞いてみて下さい。」

「日本全国どこの役所でもOKなのですか?」

太田「それはさすがにまずい(笑)。本籍地または所在地の市区町村役場の戸籍係に提出しましょう。なお、『所在地』には住所地のみならず、一時滞在地も含まれると解釈されています。もっとも、本籍地以外の市区町村役場に提出する際には、戸籍謄本が必要になります。ですので、本籍地に出すのが一番簡単でしょうね。」

「ふ~ん。じゃあ、さっそく書き方を教えて下さい!」

太田「まず、だいじなのは、ちゃんと戸籍通りの氏名・本籍地を書くということですね。戸籍が旧字体になっているようであれば、ちゃんと旧字体で書きましょう。例えば髙橋さんと高橋さんは別の人ですよ。まあ、そこで突っ返されることはないでしょうけど、基本ですので。あと、住所や本籍地を書くとき丁目・番地を1-2-3みたいに書くのではなくて、1丁目2番3号と。」

「丁目の場合、アラビア数字ではなく、漢数字が正式の表記の場合が多いようですので、そこも気をつけた方がいいですか?」

太田「正直、裁判所すら気にしていないようなので大丈夫だとは思いますが、まあ、気になる人は漢数字で。」

「それから、自分のお父さんお母さんと自分との続き柄を書く欄がありますね。」

太田「日本語としては、次男・次女でも正しいのですが、法律的には二男・二女が正しいのです。」

「あと、未成年の子の氏名とありますが・・・。」

太田「どちらが親権者になりますか、というお話ですよね。これを決めないと離婚ができませんのでね。書き方以前の問題です。また、離婚しただけでお子さんの氏が変わるわけではありません。例えば、離婚して母親がお子さんの親権者になって、お子さんが母親の氏を名乗りたいような場合は、別途子の氏の変更許可を家庭裁判所に申し立てる必要があります。」

「同居の期間を書く欄もあるんですね。」

太田「同棲からスタートした夫婦は同棲スタートの日付を書いて下さい。同居より結婚式の方が早かった場合は、挙式日を書いておいて下さい。あと、まれに離婚しても同居を続けるカップルがいますが、その場合は別居した日付は書けませんね。当然ですが。」

「しかし、離婚届って書く欄が多いんですね。職業なんか聞いてどうするんですか?」

太田「ま、統計にでも使うんじゃないでしょうか。欄がある以上は埋めて下さい。チェック欄は世帯主の仕事でチェックを入れておくのが通常です。」

「婚姻届に証人欄があるのは知っていますが、離婚届にも証人欄があるんですね。」

太田「そうなんですよ。当事者以外の成人2名であれば誰でもOKです。気をつけてほしいのは印鑑です。例えば、離婚する際に、証人ということで夫の父母が署名捺印することになったとしましょう。この際、みんな同じ名字だからといって、みんな同じハンコじゃまずいです(笑)。一人ずつ別の印鑑を押してください。実印でなくていいので、認印で。」

「じゃあ、私も友達の離婚の証人になれるんですね。しかし・・・離婚届の証人欄に署名・押印したら何かまずいことが起きたりしませんか(怖)」

太田「何をガクガクブルブルしてるんですか?」

「お父さんに、『絶対に保証人欄にハンコをつくな!』と言われました!! 事務所にも保証人欄にハンコをついて大変なことになっている人が相談に来られるじゃないですか。」

太田「ははは、借金の保証人と離婚の証人とは全く性質が違うものなんですよ。偽装離婚を知ってた・加担した、なんていう場合でもない限り特に問題はありません。」

「よかった~。いつ友達に頼まれても大丈夫ですね。」

太田「証人になってくれる人がいない場合や、離婚の事実を誰にも知られたくない場合には、証人の代行屋さんがあるみたいですよ・・・事柄の性質上あまりおすすめしませんが、裏を返せばそのくらい証人になっても問題が生じにくいということです。」

「へえ~、いろんなビジネスがあるんですね。結婚式だけでなく、離婚式を行うビジネスもできたって、前にテレビでみましたけど。」

太田「あれ、実は発想自体は新しくなくてねえ。大昔に三島由紀夫が提案してたんですよ。おそらく60年代の文章(太田注:「おわりの美学」だった記憶がある。未確認)ですので、40~50年も前の話ですね。きっと、三島が提案したころには、誰もやる勇気がなかったんです。両側からカットしたウエディングケーキをくっつけて男女別の出口から退場しろなんて言われても本気にしなかった。やっと長い年月を経てそういうビジネスが出てきたということは、それだけ離婚に対する世間の意識も変わるまでに長くかかったということでしょうね。三島といえば・・・」

「ケーキと聞いて、ケーキが食べたくなりました(ニコニコ)」

太田「Aさんの今年の目標は人の話をちゃんと聞くことですね。もうっ!」

弁護士 太田香清