前回までで、弁護士への依頼については触れました。
 (前回の記事はこちら:別居から離婚4

 今回からは、別居の実行段階に写ろうと思います。別居の大まかな枠組みは、普通の引っ越しと同じく、荷物をまとめて別居先に移ることとなりますが、今回からの記事では別居の際の留意点と、置いていくべき物及び持ち出すべき物について触れて行こうと思います。まずは、置いていくべき物です。

 この連載の始めでも書きましたが、別居後に相手との間でなるべく早く円満な離婚を成立させようと考えるのであれば、相手を不要に刺激することを避けたほうが賢明であると思われます。

 別居を実行すれば相手の感情を相応に刺激するのは確実でしょう。ただ、その上で、相手に出て行った理由を告げるか否かで、別居後の関係性はかなり変わってくると思われます。誰しも、理由も全く聞かされないまま出て行かれて、面白いはずはないでしょう。

 今回、残していくものとして触れるのは、置手紙です。

 置手紙を残し、上手く自分の気持ちを伝えることには、多くの効能があると思います。

 まずは、面と向かって話していては感情的になってケンカにしかならない場合でも、文章化することで冷静に、そして話の筋道を立てて簡潔に、相手へ気持ちを伝えることができます。口論となればお互いに相手の言いたいことは何かを冷静に考えることができなくなります。そのため、これまでは上手く伝わっていなかったことが、手紙をきっかけに伝わる可能性があるかもしれません。

 次に、読みやすい手紙を書くためには、手紙によって伝えたいことがきちんと整理されていなければなりません。推敲を重ねて手紙を書くことによって、どんどん自分の中の感情が整理され、自分が何を求めているのかが見えてくるかもしれません。

 最後は、手紙で相手にしっかりと自分の気持ちを伝えることで、相手の反発を和らげられるかもしれないことです。無論、気持ちが伝わったからと言って必ず反発を和らげることができるとは限りませんが、その場合であっても、よくわからないままに出て行かれて離婚だなんだと求められることよりも、相手の反発は強まりはしないでしょう。

 あとは、置手紙の書き方にもコツがあると思います。「これこれの点であなたが悪い。だから出ていくので離婚してほしい。」、このような手紙が置かれていれば、火に油を注ぐ様なものでしょう。相手が悪いということをストレートに書くことは、置手紙の段階ではむしろ不要なケンカの売り方だと考えられます。誰しも「悪い。」と非難されて面白くはないのですから。

 それよりも、「あなたのこのような点が、私には耐えがたく感じられる。そのため、私にはもう一緒に暮らすことが苦痛でしかない。だから離婚してほしい。」という風な書き方の方がいいのではないかと思います。「相手が悪い。」というより「相手が悪いかどうかはさておき、少なくとも自分には耐えられない。」との記載方法の方が、まだ受け入れられやすいと思われます。出て行かれる方も、よほど自分勝手でもなければ、「己の振る舞いの全てを相手は納得して認めなければならない。」などとはなかなか考えないでしょうから。

 残す物について私が考える事柄は以上です。次回は持って行く物、即ち別居に際して持ち出すと良いと考えられる物は何かについて触れてみようと思います。