最近、どっちが男性なのか女性なのか分からない事案が増えてきました。女性がフルタイムの仕事を持つとどうしても男性化してしまうようで、だからいけないということはありませんが、経済力のある女性は強いですよ。離婚したって一人で生きていけるわけですから。
そういう女性が不貞して家を出て行くパターンもありますが、「不倫をしたら慰謝料を払う」じゃなく、「慰謝料を払えば不倫して離婚してもいい」と思ってるんじゃなかろうか(笑)。
さて、このブログを読んでおられる方の中には、「俺は主夫だ!」という方もおられるのではないでしょうか? 非常に良いことですが、主夫については子どもさんを引き取って離婚するに際して問題点があると思われます。特に経済面。
児童扶養手当、これは平成22年8月1日から父子家庭にも支給されるようになりました。詳しくは厚生労働省サイトをご覧ください。
( http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100526-1.html )
もちろん、この上に子ども手当も出ます。ですが、やはり経済的な問題は大きいように思います。女性の場合、なんだかんだ言っても、高収入を望まなければ派遣やパートなどちょこちょことした働き口はあったりします。さらにパートを掛け持ちするとか実家に助けてもらうとか。しかし、男性の場合、履歴書に長い間の空白があるとなかなか厳しいのではないでしょうか(男性も派遣やパートの仕事はあるでしょうけど)。
ちょっと古いものですが統計を見てみましょう。平成18年度全国母子世帯等調査結果報告です。
( http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-setai06/index.html )
「母子世帯」というタイトルなのですが、父子家庭も調査対象になっています。
「ひとり親世帯の悩み等」の中で、「ひとり親等の困っていること」という項目がありますが、困っていることの内訳とパーセンテージが非常に興味深い。<父子家庭の場合、「家計」が 40.0 %、「家事」が 27.4 %、「仕事」が 12.6 %となっており、母子世帯との悩みの違いが見られる。>と記載されていますが、ちなみに平成15年度の統計では、それぞれ31.5%、34.6%、14.2%となっていて、家計よりも家事のほうが若干割合が高かったのです。それなのに、平成18年度で家計が家事を大きく上回ってしまいました。これはどうしてなのか良く分かりませんが、とにかく今は家事よりも家計のほうが困っている人が多いのです。
じゃあ、この家計に困っている人がみんな主夫だったのかというとそういうわけでは全くなく、父子家庭になる前には98%のお父さんが働いていたのです。働いていたお父さんが家計に困っているのであれば、主夫のお父さんは一体どういうことになっているんでしょうね。恐ろしいことです。
また、女性の場合であれば、離婚して母子家庭になると母子福祉資金制度というものが利用できます。
これは、各地方公共団体が生活費やお子さんの修学資金を貸してくれるものですね。無利子だったり低利子だったりして非常にありがたいもののはずなのですが、多くの地方公共団体が利用資格を「母子家庭」に限定しており、「父子家庭」は利用できないことになっ・・・と思っていたのですが! 調べてみると父子家庭にも貸してくれる自治体が結構あるようです。
理由は、母子及び寡婦福祉法で、母子家庭の定義に「等」を付け加えており、また定義規定に<この法律において「母子家庭等」とは、母子家庭及び父子家庭をいう>などと書いてあるからでしょうね。しかし、まあ、この法律の条文自体は、「母子家庭等」という文言よりも、「母子家庭」という文言が多いですね。資金の貸付の条文(13条)も「母子家庭」になっています。早く条文を変えた方がいい、ぶつぶつ。とにかく、お住まいの地方自治体で資金の貸付制度が利用できるかどうかは、一度調べてみる価値がありそうです。
とまあ、私が父子家庭の経済面についてグダグダ書くのは、一つには親権・監護権争いの際に、「もし子どもを引き取ったらどうしますか?」と調査官や裁判官(審判官)に問われて、「もごもごもご・・・」となるお父さんが非常に多いからなのです。「うちの親に全面的に頼ります!」なんてきっぱりと本音を言われるのも困るんですけどね(笑)。
働いているお父さん(そして大声では言えないがあまり家事・育児をやっていなかったお父さん)で心配なのは「どのように子育てをしていきますか?」という点ですが、主夫のお父さんで心配なのは「どうやって子どもの学費等を捻出しますか?」という点ですよね。審判や裁判でその辺がちゃんと言えるように、主夫の方々は福祉の制度をお勉強していただいたうえで、さらに就職活動に励んでいただきたいと思います。あ、働いている妻への婚姻費用や養育費の請求もお忘れなきよう!
弁護士 太田香清