親権者の指定は、離婚をする際に最も争いが起こりやすい事項の一つです。相手のことは憎くてしょうがなくとも、子供は別、子供と一緒にいれるなら、いつだって離婚に応じるというようなケースは多く見かけます。

 そこで、今回は、親権をとるために考えておくべきことなどに触れてみたいと思います。

 親権者指定の判断においては、幾つかの原則があると言われています。一つには、母性優先の原則、すなわち、特に子供が幼いときには母親有利という原則です。

 次は、監護継続性維持の原則、すなわち、現在、いずれか一方の親権者の監護の下にある場合、特段の問題がなければその状況を維持すべきという原則です。この2つが特に重要です。親権者の指定が争われた事例の全体で、母がとるケースが8割以上といわれる中、残りの父がとるケースは殆ど、父の下で子が監護されている場合に限られるといっても過言ではありません。それゆえ、監護継続性の事実を無理矢理作ろうとして、子の連れ去り等が行われたりするのです。

 他にも、子の意思尊重の原則というものがあります。家事審判規則には、子が15歳以上になればその意見聴取が必要とされますが(家事審判規則70条、54条)、それ以前でも、ある程度分別がついてくる10歳前後からその意思が影響を及ぼすようになるとされています。

 また、面会交流寛容性の原則といって、子供との面会交流に対し、どのような姿勢、意向を持っているかも考慮されます。親権者の指定は、あくまで子の福祉を中心に考えるため、本来、虐待等子供に悪影響を及ぼす特別な事情がない限り、一方の親との交流を断つのが好ましいとはいえず、面会交流に対する積極性は有利に働きます。さらに、兄弟姉妹不分離の原則もありますが、この要請は個別の事情によって、親双方が子供を分け合って円満に解決するのが妥当という場合もあり、それ程強い要請ではないと言われています。

 過去扱った事件で、こんなことがありました。
 暴力など振るうはずのないとても温厚な夫だったのですが、子供を連れて出ていった妻がDV防止法による保護命令制度を使って、あることないことを並べ立てて、接近禁止命令を得ました。

 そうして、子供を自分の下に安心して確保できるようにした上で、離婚調停、離婚訴訟と矢継ぎ早に申し立てたわけです。調停、訴訟と手続を進めているうちに、別居期間も長くなって、目立った離婚原因もないのに、婚姻関係破綻を強く印象付け、親権を確実化させた上での離婚を果たそうというのです。必ずしもフェアではないものの、上述した監護継続性維持の原則を裁判所は重視するものですから、戦略としては成り立ってしまう方法なのです。