今日は親権そのものとは直接関係がないのですが、調停委員についてお話しようと思います。というのも、協議離婚しないのであれば必ず通る道が離婚調停だからです。そして、調停に行った方がかなりの割合で調停委員に対する不平不満を述べられるからです。私もよく、依頼者の方に、「調停委員って何者なんですか?」と言われます。
確かに、いろいろとご不満はおありでしょうが、調停委員の心証を良くすることが調停をうまく運ぶ上での一つのポイントであることもまた事実です。「敵を知り 、己を知れば、百戦危うからず」という言葉もあることですし、今回は調停委員について勉強してみましょう。何かのヒントになるかもしれません。
1 調停委員の資格要件
民事調停委員及び家事調停委員規則に規定があります。
☆ 「民事調停委員及び家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者、民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満のものの中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満の者であることを要しない。」(第1条)
☆ 「次の各号のいずれかに該当する者は、民事調停委員又は家事調停委員に任命することができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 公務員として免職の懲戒処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 裁判官として裁判官弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
四 弁護士として除名の懲戒処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
五 医師として医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第七条第二項の規定により免許を取り消され、再免許を受けていない者
六 公認会計士、税理士又は不動産鑑定士若しくは不動産鑑定士補として登録抹消、業務禁止又は登録消除の懲戒処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
七 弁理士、建築士又は土地家屋調査士として業務禁止、免許取消し又は登録取消しの懲戒処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者」(第2条)
どうですか、イメージが浮かぶでしょうか?
専門家もそうでない方もおられるということです。専門家の方ですと、その道で悪さ・大失敗をしていない方、ということになりますかね。
2 任期
「民事調停委員及び家事調停委員の任期は、二年とする。」(第3条) もっとも、再任を禁止する規定がないので、40歳から69歳まで30年間調停委員をしても問題ありません。そんな方がいるかどうかは知りませんが。
3 解任
「最高裁判所は、民事調停委員又は家事調停委員が第二条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 最高裁判所は、民事調停委員又は家事調停委員が次の各号の一に該当するときは、これを解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行ができないと認められるとき。
二 職務上の義務違反その他民事調停委員又は家事調停委員たるに適しない行為があると認められるとき。」(第6条)
実際に、「適しない行為」があるとして解任された方はいるんでしょうか?
4 日当・旅費
出ます(第7条)。もっとも規則には細かい額は書かれておりません。
5 実際のところは?
裁判所のホームページに興味深い内容が書かれておりました。平成14年に行われた懇談会だそうです。
☆「調停委員の62%が60歳以上」
→確かに、40代の方はあまりおられないように思いますね。
☆「新聞募集はしていない。関係機関に対し,機会ある毎に調停委員の推薦依頼をしている。新聞等により募集しないのは,調停が,難しい状況で双方の言い分を聞いて説得していくという手続であり,経験や人間性が重要な要素であるため,関係機関に推薦を依頼している。地域によって応募者数が異なるので,不合格率については把握していない。ちなみに,東京家裁では,毎年60名ないし70名を選任しているが, その際,選任を見送られた人はいると思う。僧侶や牧師といった宗教家の割合は,3.1パーセントである。」
→宗教家は約3%、では法律家は??
☆「研修の機会はある。調停の仕組みや手続について,裁判所が相当行っている。また,調停委員同士での自主的な勉強会も開催している。」
→ほんとかな・・・。
☆「(推薦依頼をしている団体は)地方公共団体,弁護士会,司法書士会,商工会議所,大学等である。臨床心理士の資格を有している調停委員はいるが,そうした団体に推薦依頼しているかは把握していない。」
→なるほど、どういう方が推薦されるか分かりますよね。
☆「(調停委員は)非常勤の国家公務員という身分になる。1日当たり約1万7000円の手当プラス交通費を支払っている。」
→調停委員になったある弁護士は、全く割に合わないと嘆いておりました。推薦されるような方ならば、「1万7000円なんて安い!」ということになり、半分ボランティアのようになってしまうわけです。
☆「民事の調停委員が約1万3500人,家事の調停委員が約1万2000人だが,兼ねている人もいるので,約2万人である。」
→多いと見るか少ないと見るか。
6 まとめ
・・・そういうことですので、「調停委員が偉そうだ!」、「上から物を言ってくる!!」と怒る前に、エラい人の機嫌を取りながらうまくやる方法を考えた方がよさそうですね。調停委員の方がこのブログを見ないことを祈りながら筆をおきます(笑)。
弁護士 太田香清