こんにちは。今回は、養育費の変更についてお話ししたいと思います。

1 事情の変更

 そもそも、養育費は、親権者にとっての監護費用という側面と、子から親に対しての扶養のための費用という側面があります。前者は子の監護に関する処分として、「監護について必要な事項」(民法766Ⅰ)にあたり、親自身に認められた権利です。他方、後者は、子自身の固有の権利となります(民法877)。

 したがって、前者の側面から見ると、父母の間の合意が成立しうるのですが、後者の側面からは、扶養請求権が処分禁止されていることから(民法881)、父母間で養育費不請求の合意をしても、子からの扶養請求には影響を与えない場合があります(札幌高決昭和43年12月19日、名古屋家審昭和47年3月9日等参照)。

 このような養育費の二面性から、離婚時に養育費について父母間で合意をしていたとしても、後に事情が変更した場合には、養育費の変更が認められます。

2 増額請求

 増額が認められた事情の変更としては、子の病気や教育費の増額などがあります。そのうち、子の病気のように、やむを得ない事由であれば、増額請求が認められやすいですが、教育費の増額については場合によると思われます。

 つまり、当初決めた養育費が低額で、その後子が学齢期に達したことを理由とするというものであれば認められやすいでしょうが、非常に高額な学費のかかる学校に通わせるために養育費増額を請求しても、認められない可能性があります。

 この点、養育費増額請求の事案ではないのですが、父親に無断で入学させた私立高校の入学費用について、父親が公立高校に入学させる意向を持っていたこと等から、公立高校の入学費用を基礎として父親の分担額を定めてその支払いを命じた事例があります(神戸家庭裁判所平成元年11月14日審判)。この事例では、義務者である父親の資力や社会的地位といった点も考慮されて養育費が決定されていますので、増額請求の場合においても、同様に義務者の資力や社会的地位が考慮されると思われます。

3 減額請求

 減額が認められた事情の変更としては、義務者が失業したり、再婚相手との間で子が生まれた場合のように、義務者に養育費を支払い続けることが困難な状態になった場合と、親権者が再婚し、子と再婚相手とが養子縁組をした場合のように、扶養義務が軽減した場合とがあります。

 前者は比較的理解しやすいと思いますが、後者については以下のように考えます。すなわち、子が養子縁組した場合、養親に第一次的な扶養義務が発生し、実親は親権者及び養親に劣後する扶養義務を負担するに過ぎないと考えられています(神戸家裁姫路支部審判平成12年9月4日参照)。これにより、実親の養育義務が養親のそれより軽くなるため、その分減額が認められるということです。

4 まとめ

 以上のように、一度決められた養育費については、その後の事情の変更により、額が増減する可能性があります。最近では、経済状況の悪化により、養育費を支払い続けることが困難になり、養育費の減額請求をすることが多いように感じます。