離婚の際、親権者となれなかった親(非親権者)が子どもと定期的に会うために、面接交渉の取り決めをします。面接交渉の取り決めをするときに、非親権者からよく言われるのは、面接交渉のときに養育費を支払うようにしたいということです。

 非親権者としては、基本的には面接交渉のときにしか子どもと会えないため、面接交渉を確実に実行できるようにしたいと考えるのは当然です。そして、面接交渉を確実に実行できるようにするために、上記のように面接交渉のときに養育費を支払うようにしたいと考えるようです。

 しかし、養育費は親が子どもに対して経済的な責任を果たすものであるのに対し、面接交渉は親と子どもの精神的交流の機会を確保するものであるので、質的に異なるものです。そのため、養育費を支払うからといって、面接交渉のときに養育費を支払うよう一方的に求めることはできません。

 もっとも、養育費を支払っているという事情が、面接交渉を促進する事情にはなるようです。

 親権者が、調停条項を守らなかったことを理由に非親権者の面接交渉を全面的に拒否した審判例(京都家裁昭和47年9月19日審判)では、「相手方(非親権者)は過去を反省し、今後円満に事件本人(子ども)に面接できる場合、事件本人に対し養育料として毎月12000円程度の仕送をしてもよい旨明言しておるので、相手方の事件本人に対する面接を全面的に禁止することは相当でないと思料する。」と判断しました。

 以上のことから、養育費と面接交渉の関係は、面接交渉のときに養育費を支払うという同時履行のような関係にはないですが、養育費の支払いが面接交渉の認められる方向に有利に働く事情であるということになります。

弁護士 竹若暢彦