調停前の仮の措置とは、調停機関が、調停手続が終了するまでの間に、仮の措置として、当事者の財産の散逸を防止したり、当事者の生活の安定を図るなど、調停成立の妨害を防ぎ、成立すべき調停の内容の実現を可能にするために命じる措置で、家事審判規則133条に規定されています。
例えば、妻が夫との離婚調停を申し立てたところ、夫が妻への財産分与を妨害するために家を売却してしまう場合に、利用できる手続です。
調停前の仮の措置が認められる要件は、① 調停のために必要であること、② 調停が家庭裁判所に係属していることです。このように要件が緩やかなためか、調停前の仮の措置には、強制力や執行力はありません。ただ、正当な理由なく措置に従わない当事者に対して、家庭裁判所は10万円以下の過料の制裁を科すことができます(家事審判法28条2項)。
もっとも、実務上は、調停前の仮の措置を命じて相手方との信頼が崩れ、調停での紛争の解決が困難となることに配慮して、当事者の同意を得て仮の措置をとったのと同様の効果を導いているようです。上記の例でいえば、家の売却を禁止する仮の措置を命ずるのではなく、夫に家を処分しないとの同意を得て、家の売却を防止するということです。
まあ、実効性のある手段とは言えないかもしれませんが、夫に家を売らせないように説得するための材料くらいにはなるということですね。
弁護士 竹若暢彦