はじめまして、弁護士の山本祐輔と申します。今回よりこちらのブログにも記事を書かせていただくこととなりました。以後よろしくお願いします。

 今回のお題は、養育費の目安をどのように算定するかです。実務上、養育費は養育費算定表というものを用いて、定型的に算定しています。算定表は名前の通り表形式で作られており、書店で販売されている離婚の実務本の中にも掲載しているものがあります。

 ただこの算定表、子供が3人の場合までしか掲載されておらず、子供が4人以上のときは用いることができません。養育費を巡って調停や審判となった場合に裁判所が認めるであろう養育費の額の目安は、離婚協議においても重要な情報であり、なるべく正確に把握しておきたいものです。

 そこで、算定表の基礎にある計算公式によって、子供が4人以上の場合の計算を行おうと思います。なお、以下においては、養育費を払う親を義務者、子を育てる親を権利者とします。

〈設定〉
義務者は給与所得者で税込年収1000万円
権利者は給与所得者で税込年収100万円
子は18歳、15歳、12歳、9歳の4人
子は4人とも権利者が育てる

① 義務者と権利者の基礎収入を求める

 基礎収入とは、税込年収から税金など諸控除を行った額であり、実務では税込年収に給与所得者なら0.37~0.43、自営業者なら0.49~0.54を乗じた概算値で算出しています。税込年収額が多いほど、変動幅中の低い値を乗じます。この設定では、義務者の控除率を0.4、権利者の控除率を0.43で計算します。

義務者の基礎収入
1000万×0.4=400万円

権利者の基礎収入
100万円×0.43=43万円

② 子の生活費を求める

 子の生活費を算出するに当たっては、子の指数を出します。子の指数とは、親を100とした場合の子に充てられるべき生活費の割合であり、0~14歳の子は55、15~19歳の子は90とされています。

 子全員の子の指数を出したら、全員分の子の指数の合計値を、全員分の子の指数の合計値に義務者の指数である100を足した額で除します。そして、その値を権利者の基礎収入額に乗じます。

子の生活費
(55+55+90+90)
 ÷
(100+55+55+90+90)≒0.74

400万×0.74=296万円

③ 義務者の養育費負担額を求める

 義務者、権利者両方の基礎収入額を合計し、義務者の基礎収入額を合計値で除します。これにより、義務者の負担割合を算出します。次に子の生活費に義務者の負担割合を乗じます。

義務者の負担額
400万÷(400万+43万)≒0.90
296万×0.90=266万4000円

 この266万4000円が、義務者の年間での養育費負担額の目安です。月々の額を算出するには、この値を12で除します。

養育費月額
266万4000÷12=22万2000円

 実務上では、大体2万円幅で目安が出されますので、今回の設定の場合、義務者が支払う毎月の養育費の目安は、21万円から23万円程度となります。なお、子を双方で分けて養育する場合には、義務者に引き取られる子の分の子の指数合計を子全員の子の指数合計で除し、この値を養育費額に乗じた額を権利者に支払うことになります。