離婚するときに、月に1回の面接交渉を約束したけれど、養育費を払ってくれないので会わせたくない、といって会わせないことができるでしょうか。
どのような場合に面接交渉を制限できるかについては、面接交渉が認められる根拠にさかのぼって考える必要があります。
面接交渉権については、明文の根拠はありませんが、親として有する固有の自然権であり、人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育を求める子の権利としての性格を有するという審判例(大阪家審平成5年12月22日)があります。
離婚したとはいっても、子供にとってはお父さんとお母さんであることに変わりありません。たとえどちらかと離れて暮らすことになっても、子供が両親と継続的に交流を持つことは、子供の健やかな成長にとって、とても重要なことです。
このように、面接交渉が子供の利益のために認められているものであることからすると、親が会わせたくないからといって勝手に会わせなくてよい、というようなものではなく、面接交渉が子の福祉に反するような事情がなければ、基本的に面接交渉を制限することはできないと考えられます。
そうすると、冒頭の例のように、養育費を払わないから、という理由による面接交渉の拒否については、養育費の支払いと面接交渉は別問題であって、養育費を支払わないから子の福祉が害されるという関係にはないため、これだけを理由に面接交渉を制限することはできないでしょう。
同じ理由で、不貞をするような親は子供に会う資格がないから、という理由で面接交渉を制限することも難しいと考えられます。
では、どのような場合に面接交渉の制限が認められるかというと、結局、面接交渉を認めることが却って子の福祉に反するような場合、ということになります。これについてはケースごとに慎重に判断する必要があります。
例えば、面接交渉の際に、離婚した元の配偶者に復縁を迫ったり、金銭を要求したり、子に対し別れた配偶者を中傷、誹謗したり、子に不当に金品を買い与えるなど、現在の親権者、監護権者の教育、監護にとって好ましくない行為をした場合や、同居していた時に子が虐待を受けていた等、面接交渉の結果、かえって子の精神面における健全な成長を阻害する危険が認められるような場合には、面接交渉の制限が認められることになるでしょう。
一旦決まった面接交渉の方法を変更する方法としては、まず、協議によることが考えられますが、協議がまとまらない場合は、調停又は審判によることになります。
次回は、面接交渉の制限が認められた事例についてご紹介しようと思います。
弁護士 堀真知子