養育費の支払いは、通常、毎月一定額を支払う方法で行うことが多いと思いますが、支払いを確実にするために過怠約款を付けることはできるでしょうか。

 過怠約款とは、分割金の支払いを怠った時に、分割して支払う利益を失い、残金を一括して支払う旨の合意のことです。具体的には、「分割金の支払いを怠り、その額が○円に達したときは、当然に期限の利益を失い、残金を直ちに支払う。」というような表現の条項となります。

 離婚に関して、相手方に、慰謝料や解決金として何百万円という金銭を支払わせる場合、相手に一括で支払う資力がなければ、分割払いで支払わせることになるでしょう。しかし、長期の支払いについては、その間きちんと支払われ続けることが確実ではないため、支払を担保するために、上記の過怠約款を付けることがよくあります。

 この点、離婚に関して発生する支払い義務で、その期間が長期にわたるということでは、養育費も慰謝料や解決金と同じように思われますが、養育費の支払いに過怠約款を付けることはできるのでしょうか。

 これについては肯定する考え方と否定する考え方の両方があります。

 まず、肯定する考え方は、養育費も一定期間の養育費の総額を定めることができ、これを一括で支払わせることもできるものであって、便宜上分割払いにしているに過ぎないのだから、養育費に性質上過怠約款を付けられないと考えるべき特段の理由はない、と考えます。また、実際上、養育費を確実に支払わせる必要性が高いということも肯定論の理由の一つとして挙げられるでしょう。

 しかし、実務では、養育費の支払いに過怠約款を付することについて、否定的な考え方が取られているようです。その理由は、養育費は、子供を実際に監護するために必要な費用として、そのときどきに発生するものであること、父母の収入状況や生活状況の変化によって、支払い義務が変更、消滅する可能性を内包しているものであることから、過怠約款にはなじまない、というものです。

 確かに、慰謝料や解決金は、支払総額が確定していること、一旦確定した後に総額が変動する可能性が非常に低いこと、一般の民事訴訟と同じように、不法行為(民法709条)等に基づいて発生することが多いことから、一般の民事訴訟における債権債務と同じと考えられますが、否定論の理由として挙げた養育費の性質を考えると、これと同列には論じられないように思います。

弁護士 堀真知子