1月も半ばを過ぎ、中高一貫校の受験生を抱える親御さんはお子さんの体調管理、スケジュール管理に神経を使っている頃ではないでしょうか。少子化で子どもが減っている中、首都圏ではこの10年ほど中学受験者数は増加傾向が続いており、ある進学塾のデータによれば、首都圏の子どもの4人に一人が中学受験をするようです。

 では、離婚をする場合、このような中学受験のための塾費用は養育費に含めて請求できるのでしょうか。

 進学塾の月々の塾費用や夏休みや冬休みの講習代は、場合によっては5万、6万円にもなるため、これをどちらが負担するかというのは大きな問題になりそうです。

 まず、養育費の額は父母の協議によって決めるのが原則ですが、当事者間での合意が難しい場合は、裁判所で決めることになります。

 裁判所の実務では、子が養育費を支払う義務のある親(義務者)と同居していると仮定した場合に義務者が子どもの生活費をいくら払っているかを算定し、これを義務者と支払を受け取る権利のある親(権利者)の収入で按分する、いわゆる標準的算定方式によって算出されています。この標準算定方式に従って実際に計算するのは面倒であるため、実務においては、子どもの数、年齢ごとにまとめた算定表に、義務者と権利者の年収をあてはめることによって養育費を算出しています。

 養育費には子の衣食住のための費用、健康保持のための医療費など生きていくのに不可欠な費用だけではなく、学校の授業料や教材費等の教育費も当然含まれていますが、この算定表には地域差が反映されていません。

 従って、4人に一人が中学受験をして高額な進学塾に通っている首都圏の子どもと、クラスの大多数が地域の公立中学に進学する地方の子どもとでは教育費には大きな差があるはずですが、その点は特に考慮されていないという問題点があります。

 よって、算定表から単純に算出された養育費では、このような進学塾代をまかなうことはかなり難しいと思いますので、裁判所の手続きでこのような高額の進学塾代を請求する場合は、塾代を養育費として相手に負担させるべき個別の事情を主張することが必要でしょう。

 たとえば、父母の学歴、生活レベルなどから、子どもに高額な塾費用をかけて中学受験をさせることが相当といえるかどうか、そもそも子どもに中学受験をさせようとしたのはどちらの親なのか、子どもの勉強に関するて相手方の態度や関わり方はどのようなものであったのか等の事情により結論は異なってくると思われます。

 いずれにせよ、まずは、親の都合で子どもの将来が不幸な方向へ曲がらないように、親としての責任を持って話合いをすることが必要でしょう。

弁護士 堀真知子