(2)養育費・婚姻費用の相場

 上記のように養育費・婚姻費用の算出については、算定表を基に計算することが多く、弁護士が介入する事案ではほぼ確実に算定表に基づいて話し合いがされることになります。
 すなわち、養育費・婚姻費用の相場は、算定表の計算とほぼ合致するということができます。
 したがって、養育費・婚姻費用を取り決める際には、双方の収入に関する(源泉徴収票、賃金台帳等)を開示した上で、算定表にあてはめるという作業を行うことになります。

(3)算定表の例外

 算定表は、養育費・婚姻費用の算定を簡易にしてくれる点で非常に便利なものですが、簡易な計算という目的のために夫婦それぞれの個別事情は考慮されていないというデメリットがあります。
 そして、多くの夫婦の場合には、算定表に基づいて計算をすれば特段の不平等は生じないのですが、中には算定表をそのまま当てはめてしまうと当事者間に不平等が生じしてしまう場合があります。

  1. 例えば、別居中の夫婦において、夫側が自分のアパートの家賃と別居中の妻が住む持ち家のローンを二重に負担している場合には、夫側に算定表通りの婚姻費用を求めるのは妥当でない場合があります。
    なぜなら、算定表には、標準的な住居は織り込み済みであるため、ローンを負担して妻の住居を確保している以上、その点を考慮して婚姻費用を減額すべきだからです。
  2.  
  3. また、子供が私立の学校に通っている場合には、算定表通りに養育費を計算すると妥当でない場合があります。
    なぜなら、算定表が想定しているのは公立学校の学費であり、夫婦が合意のうえで子供を私立学校に進学させたにもかかわらず、離婚後に一方のみが学費を負担するとなると、一方当事者の負担が過大になってしまう可能性があるからです。

 アとイで記載したものはあくまで具体例の一つにすぎませんが、算定表を用いて画一的に計算するだけでは解決できない事案があるのは確かです。
 これ以外にも、算定表が予定していないような高収入な夫が離婚する場合にはそもそも算定表を使用することができませんから、原則論に戻って、当事者双方の基礎収入、生活指数等に基づいて養育費・婚姻費用を計算することになります。