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原則として不貞慰謝料請求をする前に訴訟で確実に勝てる証拠を準備するべきです。やみくもに請求しても相手が正直に白状するとは限りません。また、不貞慰謝料請求を行うと離婚や親権に関する見通しに影響を与える場合もあるので、専門家に相談してから慰謝料請求をするべきです

 まずは冷静になって訴訟で勝つための証拠収集に専念するべきです。実際に慰謝料請求を行うと、不貞を行った当事者は嘘をついてでも事実を否定することがあります。
 難しいのは証拠は保存できたけれど、訴訟で勝てるかどうか分からない場合です。

 例えば、不貞を行った配偶者の携帯から「離婚しても半年は入籍できないが、(不貞相手に)ウエディングドレスを着せてあげたい。」というLINEの送信履歴を発見した場合には民事訴訟で勝訴できるでしょうか。個人的な意見になりますが、不貞を行った配偶者に「冗談だった。単なる友人だ。」と強弁されると、このLINEの送信履歴だけでは不貞行為があったと認定される可能性は低いと考えます。
 このような場合には長期のメールのやり取りや決定的な写真等の証拠を保存してから慰謝料請求を行うべきです。

 また、慰謝料請求を行うことが離婚や親権に関わる場合があります。  慰謝料請求を行った後に夫婦が復縁する場合もありますが、基本的には慰謝料請求を行うことにより夫婦関係は破綻して離婚する可能性は高まります。他方で、不貞の証拠が確実なものであったり、相手方に不貞の事実を認めさせることができる場合には、不貞を行った配偶者はいわゆる有責配偶者になりますので、不貞を行った当事者からの離婚の請求が極めて困難になるということも考慮しなければなりません。 親権者を決定する際には原則として不貞の有無は考慮されないので、不貞を行った配偶者が親権者になることも十分にあり得ます。親権を希望する場合には、不貞慰謝料請求を行う前に親権を取得できる見込みがあるかどうか確認する必要があります。

 いずれにせよ複雑な検討が必要になるため、専門家に相談して、証拠の内容や相手方の性格等を考慮して最善の請求時期を決める必要があります。