- A.
- 法律上契約は、原則、当事者の合意のみで成立します。そのため、契約書がなくても、契約が有効となりますし、一方で、契約書があっても契約が無効となる場合もあります。そのため、契約書があるという点は特に考えず、独自の契約結婚が有効かどうか考えていきます(もちろん、証拠という意味では契約書は重要です。)。
さて、質問に対する結論から言うと、契約結婚の内容によって有効かどうか変わります。そこで、具体例を考えて、個々の契約内容が有効であるかどうかについて、考えていこうと思います。
なお、できる限り、「逃げるは恥だが役に立つ」に出てきた契約内容で考えていきたいと思いますので、ここからは少しネタバレが入るかもしれません。まだ見ていない方は、注意してください。
結婚契約
結婚契約といっても、「将来結婚する」というもの(婚約)もあれば、「婚姻届を出さないが夫婦になる」というもの(内縁の合意)、実質は、単なる恋人で、その愛を確かめたもの(恋人関係)とさまざまです。そもそも、結婚が夫婦になるという合意があってはじめて成立し、この合意は当然有効ですから、婚約・内縁・恋人のいずれの趣旨の合意でも有効の可能性が高いです。
なお、内縁の成立は合意だけでなく、夫婦の実態(同居の有無、生計が同一かなど)がなければ認められないため、合意だけで内縁が成立するわけではないという点は注意が必要です(下記の財産分与が可能かどうかが変わります。)。
ハグ契約
この契約は、判断が分かれるところかと思いますが、有効の可能性が高いと思います。なぜならば、ハグをするかは個人の自由なので、ハグを週何度するか合意したとしても法律上有効性を否定する必要がないと思われるからです。
ただし、ハグをするかは個人が自由に決めるものであり、自主的に行わないと意味がありません。そのため、仮に、「週に一度、火曜日にハグをする」と合意したからといって、強制的にハグをさせることはできません(平たく言えば、裁判に勝ってもハグを強制的にさせることはできないということです。)。
付け加えておくと、ハグの合意等は、離婚事由の有無の検討に際して、考慮要素となる可能性があります(結婚の話の中で、離婚の話をするのは、はばかられるものがありますが、法律を考えるうえで、結婚と離婚は切り離せません。決して、みくりさんと平匡さんが別れると思っているわけではないので、誤解なきよう。)。
財産分与
最後に財産分与について書いて終わります。
財産分与が可能かは、結婚契約の趣旨によって変わります。
婚約及び婚約といえない恋人関係の場合、夫婦関係ではないわけですから、財産分与できません。そもそも、財産分与が夫婦共同生活期間の財産を分けるというものですから、夫婦関係にない段階では財産分与できないのです。
一方、内縁については、婚姻届けを出していないだけで夫婦の実態があるため、内縁関係の成立が認められれば財産分与できます。