3 離婚調停の土地管轄(例外)

 第1に、管轄権を有する家庭裁判所に調停が申し立てられた場合であっても、裁判所は、「手続が遅滞することを避けるために必要があるなど相当な場合」には「事件を処理するために特に必要がある場合」には管轄権のない家庭裁判所にそれぞれ移送することができる(家事事件手続法9条2項)としています。

 第2に、管轄権のない家庭裁判所に調停が申し立てられた場合、裁判所は管轄のある家庭裁判所に移送するのが原則ですが、例外的に「事件を処理するために特に必要がある場合」には、職権で管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送する、あるいは自ら処理すること(自庁処理)ができる(家事事件手続法9条1項)としています。

 上記した、「事件を処理するために特に必要がある場合」とは、事件の迅速適切な処理のために必要と認められる場合をいいます。例えば、離婚事件において見成年の子の親権が争点になり、子について調査官調査が行われる可能性が高いのに子が遠方にいる場合がこれにあたります。もっとも、自庁処理するか否かは、実務上、相手方の意向も聴取した上で、裁判所の広い裁量で決められています。

4 ご相談者に対する回答

 調停では、申し立てた方(Bさん)を申立人、申し立てられた方(Aさん)を相手方と言います。
 そして、調停は相手方の住所地又は双方で合意したところで行うのが原則ですので、特段の事情がなければ鹿児島家庭裁判所で調停が係属することはありません。
 本件は、BさんがAさんに黙って子どもを連れて別居に踏み切っていること、Bさんは実家に身を寄せており資力にはそれほど問題がないこと、Aさんは親権を争う予定はないこと等の事情があったため、鹿児島家庭裁判所で調停を進めなければならない特段の事情がない事案でした。
 また、自庁処理に関する意見照会書に関しては、大阪家庭裁判所に移送してもらいたいとの意見を述べた上で、その旨記載した「移送申立書」を提出すればよいです。
 実際、この件に関しては、鹿児島家庭裁判所が家事事件手続法9条1項により、大阪家庭裁判所に移送決定がなされ、大阪家庭裁判所で調停を進めることになりました。

5 まとめ

 今回の場面では、Aさんが鹿児島家庭裁判所で調停を進めることに同意していれば、鹿児島家庭裁判所は大阪家庭裁判所に事件を移送することはなかったと思います。
 このように離婚調停は、申立直後にも重要な手続きが潜んでいますので、離婚調停を申立てられたらすぐに弁護士にご相談下さい。