事例

 A子さんは、夫であるB男さんの不倫が原因で離婚を決意し、B男さんも離婚すること自体には同意して、現在中学2年生の息子の親権をA子さんに譲ると言いました。しかし、B男さんは、息子の養育費については義務教育が終わるまでの最低限しか出さないと言います。A子さんは、医者になりたいという息子のために、何とか私立大学の医学部に進学させてあげたいと考えています。B男さんに養育費を出してもらうことはできるのでしょうか。


 養育費の終期は一般的に、成年(20歳)に達するまでとされています。
 しかし、扶養の本質は、親が子について自己の生活と同一の生活程度を保持すべき義務であり(後述の大阪高裁H2.8.7参照)、親は大学を出たのに、親の都合で離婚されたからといって、その子供が高等教育を受けることができないのは不公平です。
 実際、短大、大学、専門学校などで学業に従事している場合にはフルタイムで働くことはできませんから、未成熟子の段階にあるというべきですし、現在では高校卒業後もこれらの高等教育を受けることが一般的となってきておりますから、子供にとっても、これらの学費を出してもらうことは当然に期待すべき権利であったといえます。

 判例の中にも、扶養義務者(上の事案ではB男さん)の資力(資産、収入からして当然に進学させることが期待できる等)、両親の学歴(B男さんも医大修了して医師として働いている等)、これまで生活してきた経済的、教育的水準、両親の子供に対する進学の理解、子供の学修状況等を考慮し、生活環境として、大学進学が通常のことと考えられる事案であれば、大学卒業時までの扶養義務を認めるものもあります。(義務者父が小学校教師である事案で東京家裁S50. 7.15が、義務者父が医者であった事案で大阪高裁H2.8.7が、大学までの学費の一部等を認めております。)

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