1.離婚調停は相手方住所地の裁判所で行われるのが原則
離婚調停は、原則として相手方の住所地で実施しなければならないため、夫婦が別居し、しかも遠隔地に住んでいる場合には、原則として、相手方の住所地の家庭裁判所に行って離婚調停を行わなければなりません。東京にいる夫が、沖縄にいる妻に対して離婚調停を申し立てたというケースであれば、夫は沖縄の家庭裁判所へ行って離婚調停を行わなければいけません。
なお、弁護士を代理人として選任したとしても、離婚調停は、原則として代理人のみの出頭は認められないので、本人も出頭しなければならず、弁護士をつけただけでは相手方住所地へいかなければならないことに変わりはありません。
2.電話会議システム
こうした不便さを解消するため、現在の家事事件手続法の施行に伴って電話会議システムが導入されています。電話会議システムは、文字通り、電話で調停員と会話する制度ですので、現地まで出頭する手間を省くことができることがあります。
3.離婚調停における電話会議の注意点
ただ、確かに電話会議システムはとても便利なのですが、いくつか注意点があります。
まず、離婚調停の成立の場面においては、離婚という法的な身分関係の変動を伴うため、電話会議システムを利用することはできず、本人が出頭する必要があります(家事事件手続法268条2項、同54条1項)。そのため、離婚の成立を急がれており、かつ、次回で調停が成立する見込みがある場合は、電話会議にしてしまうと当該期日での調停成立ができないため、電話会議ではなく、面倒でも実際に出頭すべきです(仮に電話会議で話自体はまとまっていても、その次に直接出頭した際にその通り話がまとまる保証はありません)。
また、仮に、調停成立の見込みが低い案件であっても、最初から電話会議を利用して一度も調停委員と実際に会わないというやり方はあまりお勧めできません。調停は、訴訟と異なり、証拠と法にのみ基づいて結論を出すわけではなく、調停委員が当事者間の事情をすべて聞き、それらも考慮した上で解決方法を調整しますので、一度は直接お会いした上で当事者本人から真摯に事情を説明していただく方が事情は良く伝わるからです。その方が結果的に調停を有利に進められることが多いと思われます。
4.まとめ
電話会議システムを使うかどうかは、事案の内容や調停の展開も考慮した上で決める必要がありますので、一度弁護士へご相談下さい。
弁護士 森 惇一