来月、注目を集めている事件の弁論が最高裁判所の大法廷で開かれます。
 争われているのは、「夫婦別姓」を認めない現行の法制度および「再婚禁止期間」を定める民法の規定が、それぞれ憲法に違反しないかという点です。
 このエントリーでは、「再婚禁止期間」について取り上げたいと思います。

 「再婚禁止期間」は「待婚期間」とも呼ばれるもので、女性のみ離婚後6か月を経過するまでは再婚を認めないとする、民法733条の規定による制限です。
 このような条文が定められている趣旨は、父性(嫡出)推定の規定との兼ね合いにあるとされています。最高裁判所は、過去の裁判例で、同条の趣旨として、「父性推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある」と判示しており(最判平成7年12月5日)、 法律婚を前提として父子関係を婚姻関係に紐付ける我が国の家族法のもとでは、同条は一定の必要性が認められると解されてきました。
 すなわち、婚姻関係が終了してから300日以内に生まれた子は、当該婚姻関係から生まれた(別れた夫が父親である)と推定される一方、婚姻してから200日以上が経過してから生まれた子もまた同様の推定が及ぶものとされています(民法772条)。そのため、もし女性が前婚の離婚後ただちに別の婚姻関係を結び、その日から200日〜300日目までの間に子が生まれたら、両方の婚姻関係からの嫡出推定が及んでしまうこととなり、どちらの配偶者が父親であるかについて紛争を引き起こしてしまいかねない、というわけです。

 言うまでもなく、「禁止」とはいえ罰則が存在するわけではなく、端的に前婚から6か月が経過するまで婚姻届を受理してもらえないという不利益があるにとどまります。しかし、このような再婚禁止は女性にのみ設定されており、男性は離婚届さえ提出してしまえば、その日のうちに別の女性と再婚することも可能です。このような差異を設けることが、男女の平等を定める憲法14条に抵触するのではないかという議論は以前から存在しました。特に、父子関係の存否は最近であればDNA鑑定などで比較的容易に立証することができますし、前述の嫡出推定の期間との関係でいえば、6か月180日間もの長期にわたって再婚を認めないことが合理的な規定であるといえるのか、との観点から、733条の合憲性に疑いがあるとの見解は近時有力に主張されているところです。

 若干堅苦しい話を連ねましたが、折から「夫が浮気をして、その女性と結婚したいから離婚して欲しいと言われている」との相談を受け、あまりの一方的な意見に少々呆れながらも色々とアドバイスをさせてもらったばかりで、まさに<現在の配偶者から“乗り換える”>という話から、かねてより関心を寄せていたことがらについて触れてみたいと考えた次第です。

 この事件の判決が出るのはもう少し先になることでしょうが、結論がいずれであれ新聞やテレビなどで報道されると思いますので、興味のある方はぜひ注目しておいていただければと思います。