1 はじめに

 婚姻後に、相手方の同意なく勝手に離婚できないのは当然ですが、結婚の前段階にあたる婚約をした場合であっても、正当な理由のない一方的な婚約破棄は、民法上の不法行為に該当し、慰謝料支払義務を負うとするのが裁判例の趨勢です。

 ただ、「婚約」とは具体的に何をしたら認められるのか区別が難しい概念ですので、今回は、いかなる場合に「婚約」が認められるのか考察したいと思います。

2 婚約とは

 法律的な表現をすれば、婚約とは、当事者間の将来婚姻をしようという当事者間の予約契約のことであり、当事者間の将来夫婦になろうという合意によって成立するとされています。「合意によって」ということですので、結納の授受、婚約指輪の交換その他一定の形式をとっていなくても、婚約は成立するということです。
 もし、結納や、婚約指輪の交換まで行っていれば、裁判上では、婚約は優に認定されると思われます。

3 結納や婚約指輪の交換がないケース

 結納や婚約指輪の交換といった婚姻関係形成に向けての具体的な行為がなされていない場合でも、婚約が認められ、婚約の不当破棄による慰謝料の支払が命じられた裁判例があります(東京地裁平成15年1月27日判決)。

 同判決では、「結納といったような婚姻関係形成に向けての具体的な行為がなされたり、結納の時期をいつ頃にするといったような具体的な予定が立てられたりしたことを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない」「いわゆるプロポーズといったものはなく」としつつも、当事者間で家族ぐるみの交際をしていたこと、週に何度も相手の家で食事をとっていたこと、そのまま相手宅に泊まることもあったこと、一方の父が他方に就職の紹介、斡旋をしていたこと、一方が他方に対して結婚しようという趣旨の発言をしたのに対し、結婚を否定するようなことはなく、いずれは結婚するかのような答えをしていたことから、結婚することについて暗黙の合致があったとして、婚約の成立を認めています。

4 まとめ

 上記のような裁判例が存在するように、明示的な行為がなかったとしても婚約が認められてしまうケースがあるなど、婚約の成否の判断は極めて微妙です。お困りの方は、一度弁護士へご相談下さい。

弁護士 森 惇一