本日のテーマは、退職金の財産分与についてです。
離婚が成立した時点でまだ退職金は支給されてはいないけど、財産分与の対象になるのかという相談をいただくことがあります。

 退職金には、労働対価の後払い的な側面がありますので、婚姻期間中の貢献分が退職金に反映されていると考えられております。この点について、裁判例(東京地裁平成11年9月3日判決)は、「夫が取得する退職金には妻が夫婦としての共同生活を営んでいた際の貢献が反映されているとみるべきであって、退職金自体が清算的財産分与の対象となる」としています。

 退職金が財産分与の対象になるとして、次の問題は、退職金が将来支給される場合の算定評価方法です。

 原則的には別居時点で自己都合により退職した場合の退職金相当額を算定の基準とするべきと考えられています(「離婚事件の実務」東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編122頁参照)。

 他方で、先の裁判例は、「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出し、これを現在の額に引き直したうえ、清算の対象とすることができると解すべき」としております。この裁判例は、夫の定年退職まで近接していることから、定年退職時の退職金を基準にして、婚姻期間対応分を算出し中間利息を控除して算定しているものと考えられます。

 財産分与を取り決めるにあたって、退職金は争点化することも多いので、お困りの際はご相談ください。