あけましておめでとうございます。
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 さて、今回も、前回に引き続いて、「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められた事例として、性格の不一致について判断した横浜地裁昭和59年7月30日判決を紹介します。

 本件は次のとおりです。

 夫と妻は親族の紹介で見合いをして、3、4回会った後に結婚しました。結婚後、妻は会社を退職して主婦業に専念し、新婚生活がスタートしました。

 しかし、妻は、新婚生活がスタートした2ヶ月後には結婚生活に失望し始め、夫と共感し合うところが無くなり、気詰まりを覚えるようになり、結婚4ヶ月後ころからは性交渉も拒否するようになりました。

 これに対し、夫は、結婚生活には双方の理解が必要であると説き、妻の職場をあっせんするなどの努力をしましたが、夫は、あくまでも自分の生活習慣に従っていたため、妻の気に入るところとはならず、妻の夫に対する拒否感情が募るばかりとなっていきました。

 結局、結婚11カ月目には別居してしまいました。その後も夫は、生活費を送るなどして回復に向けて努力をしていたましたが、妻の夫に対する嫌悪感をますます強めるばかりで、調停も不成立になり、訴訟になりました。

 このように事情を見てみると、本件の離婚原因は、いわゆる「性格の不一致」と総称されるものであり、不貞行為や暴力などと異なり、明確な離婚原因らしいものが見当たりません。そのため、従前の離婚の裁判例からすると、妻の離婚請求をわがままなものであるとして認めないことになるようにも思われます。

 しかし、裁判所は次のように判断して、妻の離婚請求を認めました。

 すなわち、夫と妻の婚姻生活は結婚後格別の問題もなく推移していたが、結婚後2か月ころから不自然な状態になったのであり、これについては各人の行動に取り立てて非難される原因があったものではなく、夫婦間の精神的不協和がその重要な原因であり、それは、妻の夫に対する絶望感ないし愛情喪失にあること、その由来は夫婦ないし結婚生活に対する双方の考え方の懸隔(性格の不適合)ともいうべきものであり、これを克服して感情の交流を図りうる相互理解がついに得られなかったことなどにあると判断しました。

 そうすると、夫は努力していたにもかかわらず、妻が協力しなかっただけのようにも思えます。

 しかし、裁判例は、夫婦は多くの場合、性格や意見を異にするものであるから、円満な結婚生活をするためには双方がその相違や対立を克服するように協力して努力しなければならないものであり、その方法として夫婦の対話が重要であるが、それは真に相手方を理解しようとする姿勢に基づくものでなければならないとして、本件では、妻が夫に対して話をしても理解し合えないという絶望感を抱いていたにもかかわらず、夫がその心情を真に理解して適切な対応を取っておらず、むしろ、夫は自身の考え方を一方的に押し付けるばかりであったため、対話ができなかったのであるから、もっぱら妻が拒否していたのではなく、夫婦双方に問題があったと判断しました。このように、婚姻破たんの責任が専ら妻にあったのではなく、妻に拒否反応を取らせるようになった原因である夫の生活観や生活態度が重要な離婚原因であるとして、妻からの離婚請求を認めました。

 このように、性格の不一致についても、双方に原因があり、破たん原因になりうるとしたことには意義があると思います。特に、後半部分は他の件でも参考になると思い、紹介させていただきました。

弁護士 松木隆佳