皆様、こんにちは。

1 イントロ

 今回のタイトルは一見すると支離滅裂な内容に見えますね。

 これはふざけているのではなく、「親子」間で子(左記の「親」にとっては孫にあたりますね。)の取り合いが起こる可能性があるという点が今回のテーマであることを示したかっただけです。

 子の親権は基本的に両親に帰属し、離婚の際には親のどちらかに指定することになります。しかしながら、祖父母が親に代わって子(孫)の面倒を見ることがよくあります。それでは子にとって、祖父母と親との間で誰が子の監護をするのか争いになったときにはどのように判断されるのでしょうか?

2 事案の紹介

 (1)近時の事案では、祖父母と同居している子の監護権に関して、母親に対し監護者を祖父母に指定するように求めた事件がありました(母親も同時に祖父母に対して子の引渡しを求めました。)。

 この事件は最初に家庭裁判所での審判を経た後、母親側からの不服申立がなされて東京高等裁判所で審理されました。

 家庭裁判所での原審判では、祖父母の申立てを認め、母親による子の引渡しの申立ては却下しました。

 ところが、高等裁判所では、両者の申立てを共に却下してしまいました(東京高裁平成20年1月20日決定)。

 理由としては(ⅰ)祖父母の申立てについては、家庭裁判所は家事審判法で定められた審判事項について判断する権限が与えられているところ、本件のような祖父母と母親で監護者を決めるというケースは、家事審判法が定めて審判事項にあたらないので、不適法な申立てであるとして却下すべきと考えているようです。

 また、(ⅱ)母親からの子の引渡しの申立てについても、平たくいえば家事審判法に定められていない事項であるので、審判を求めることはできないと考えているようです(代わりに人身保護法に基づいて引渡しを求めてみてはどうかという趣旨の示唆がなされています。)。

 (2)ところが、それ以前に同じようなケースで祖父母に監護者の指定を認めた事件がありました(大阪高裁平成16年5月19日決定)。

 この事件は祖父母が子の両親(母親が実親で父親は養子縁組をして共同親権者となったようです。)に対して、子に対する虐待を理由に監護者を祖父母に指定するように求めました。

 当該事件では、家庭裁判所での原審判が、(1)で紹介した東京高裁の決定のように法律上祖父母に監護権者の指定を求める申立権を持たないからという理由付けで、祖父母の申立てを却下しました。

 しかしながら、大阪高等裁判所では、祖父母が両親らから虐待を受ける子の監護を何年にもわたって心を砕いて行ってきた一方、両親は躾に暴力も必要であるという考え方に固執しているところがあり、子の福祉の観点から祖父母を監護権者に指定することを認めました。

3 最後に

 2つの事件を見た印象としては、2(2)の事件は親による虐待が続けられており、子も親の下に戻りたくないという意思を表明していたことから、実態を重視して結論を決めたように見えます。

 民法766条1項及び同2項によれば、父母が離婚の協議をするに際して子の監護に必要な事項を協議で定めることになっており、家庭裁判所で監護者を決めてもらうことができる、と読めます。条文を形式的に読むと、父母間での協議に限られることになり、祖父母が介入する余地がなさそうです。

 祖父母をとした2(2)の事件の大阪高裁は、766条を類推適用して、子の福祉の観点から子の事実上の監護者等一定の者には監護者指定の申立権があるという解釈をして、条文の問題をクリアしようとしました。

 状況が似ているからといって何でも類推適用するわけにはいきません。監護者となれる者の余地を拡げすぎると、今回のように祖父母に限られず、おじやおば、果ては何の血縁関係もない者まで登場してくる可能性があります。裁判所としてはどこまでで線引きすべきかという判断が難しいのかもしれません。

 ただ、今回のような監護者指定の申立て事件は家庭裁判所の調査官の調査を入れることができます。監護実績がある者による申立てについては、裁判所で監護の実態をきちんと調べた上で判断してもらう方が、2(1)の事件のように人身保護請求をしなさい、とたらい回しされるよりは事件の解決としては有益ではないかという気がします。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。