今回は、財産分与を人事訴訟で審理する場合の審理手続きの特徴についてお話します。

 財産分与の申立ては、離婚確定後2年以内であれば家事審判として申し立てることができます。また、財産分与の申し立ては、離婚訴訟とともに申立てることもできます。この場合は、審判ではなく、離婚訴訟という一種の訴訟の中で審理されることになります。

 しかし、実際は、当事者の話合いによる自主的な解決が期待されていることからも、離婚調停等,調停において話し合いが行われ,調停では話し合いがつかなかったときに、審判によって結論が示されることが多いかもしれません。

 今回は、財産分与が離婚訴訟とともに申立てられた場合についてのお話しです。

 離婚訴訟というのは人事訴訟という部類の訴訟手続きですが、財産分与の申し立ては訴訟手続きの中で審理されたとしても、本来は審判で審理されるべき事項であるため、次のような特徴があります。

 まず、裁判所は、当事者の求める「申立ての趣旨」に拘束されずに審理して結論を出すことができます。これはどういうことかというと、例えば、通常の訴訟であれば当事者の求める額以上に裁判で結論を出すことができませんが、財産分与の申し立てにおいては当事者の求める額以上の結論を出すこともできます。

 そこで、財産分与を申立てる場合には、通常の訴訟とは異なり、「金○円を支払え」等のように具体的に分与を求める処分の内容を特定する必要はなく、「単に抽象的に財産の分与の申立てをすれば足りる」(最判昭和41年7月15日民集20巻6号1197号)とされています。しかし、早期に争点を提示する観点からも、実務においてはできるだけ具体的な主張をするように求められています。

 次に、一方が上訴した場合に、裁判所は、上訴した者に対して上訴する前よりも不利益な判断をすることができます。

 さらに、財産分与の申立てにおいて活用される場合は多くないかもしれませんが、「事実の調査」(人事訴訟法33条)といって、家裁調査官の調査、裁判官による審問、調査嘱託等の裁判所の職権調査が認められています。

 証拠開示手続きについては、通常の民事訴訟手続きにおけるのと同様なものが用意されています。しかし、民事訴訟手続きにおいては、例えば相手方が文書提出命令に従わない場合、当該文書の記載に関する申立人の主張を真実と認めることができるとされています(民事訴訟法224条)が、財産分与が審理される人事訴訟という手続きにおいては、この条文は適用除外となっています(人事訴訟法19条1項)。