今回は、配偶者の浪費を理由とする離婚についてお話したいと思います。
例えば、配偶者の一方が無断で借金を重ねて、いつの間にか膨大な借金を抱えていたことが発覚した場合や、収入に見合わない洋服やアクセサリーを頻繁に購入して家計を逼迫させているといった場合等が考えられます。
このような場合、家計を困窮させることは夫婦生活の維持を困難にさせる原因の一つであり、これにより婚姻関係を破綻させて回復の見込みがないということになれば、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)に当たり、離婚原因となると考えられます。
また、夫婦には、夫婦の協力・扶助の義務(民法752条)がありますから、一方の配偶者が浪費ばかりして他方に生活費を渡さないということ等になれば、夫婦の協力・扶助義務に反する行為であるとして、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)を理由とする離婚の請求が認められることも考えられます。
裁判例では、夫がはっきりと理由を説明しないまま借金を繰り返し、多額の借金を作ったことを理由に妻から離婚請求がされ、判決直前の借金の総額は自宅の土地・建物を担保にして約800万円、月々の返済額は10万5000円であった事例において、借金の問題以外に婚姻生活を継続していく上で特に支障となるような事情は全く認められないこと、夫婦共働きにより借金の返済も生計の維持も楽になると考えられること、夫が作った借金の原因は、夫の弟の私立大学の進学の費用や妻との婚姻費用の不足を賄うためでありやむを得なかったと言えること等を考慮して、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえないとした事例(仙台地判昭和60年12月19日判タ595・77)があります。
他方、夫が頻繁に転職をし、安易に借金に走った挙句、妻に数百万円の融資の保証人となることを求め口論となるなどし、さらに難病に苦しむ妻に対し「気違い」などと罵り、思いやりを欠く態度を示すなどしたことから、妻から夫への離婚請求をした事案において、夫が積極的に妻と和合して円満な婚姻生活を回復する意欲がないものと認定したうえ、婚姻関係の破綻についての過半の責任は、夫の著しくけじめを欠く生活態度や、妻の病気に対する思いやりの無さにあるとして、婚姻を継続し難い重大な事由があるとしたものもあります(東京高判昭和59年5月30日判タ532・249)。
これらの裁判例から、積極的に円満な夫婦関係の回復を望んでいるか否か、借金の原因が何であるか、浪費以外の原因の有無等が離婚原因の有無にあたって判断される要素の一部であると考えられます。