物流業界では、昨今、人材不足を補うために、外国人の雇用を検討する企業が増えています。この点、外国人はトラックドライバーとして就労ビザを取得できませんが、技能実習生を雇用し、仕分けや配送作業を担当させている企業が多いようです。そこで、今回は外国人労働者を雇用する際に、日本人の労働者を雇用する場合と比べて特に注意すべき点について確認していきます。
雇用にあたっては、まず、外国人労働者の在留資格及び在留期間を確認し、日本国内で就労ができる人材か否かを確認することが重要です。この点、出入国管理及び難民認定法は、外国人の不法就労を防止するために、不法就労助長罪という犯罪を定めています。すなわち、外国人が、不法に入国して就労すること、在留資格ごとに認められている活動の範囲を超えて就労すること、在留期間を超えて就労すること等を知りながら雇用した者には、不法就労助長罪が成立し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が予定されています(同法73条の2第1項)。この不法就労助長罪は故意がある場合だけでなく、過失があるに過ぎない場合についても成立し得ます(同法同項2号)。
たとえば、事業主が不法就労者であることを知らずに雇用したとしても、応募者の名前や話し方などから、明らかに外国人であることがわかったにもかかわらず、パスポートや在留カードを何ら確認することなく雇い入れたような場合は、「知らなかった」では済まされず、過失により、不法就労助長罪に問われる可能性がありますので注意してください。
このほか、事業主には外国人労働者の雇入れ又は離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。当該届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります(雇用対策法28条、38条1項2号)。
事業主が外国人労働者を雇用した場合、当該外国人労働者が日本国内で就労している限り、日本の労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの法律が適用されます。とりわけ、労働基準法3条が「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と規定していますので、外国人であることを理由に賃金形態や昇給基準等において差別的な取扱をすることや、外国人のみに適用される就業規則を作成して日本人労働者と異なる労働条件を規定すること等は違法となります。外国人であることを理由とする差別的な取扱いに対しては、労働基準法上、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰則が定められています(労働基準法119条1号)。
外国人を雇用する際は、法律で定められた手続きを行う必要があるほか、国籍等を理由とする差別的な取扱をしないように、留意する必要があるといえます。