近時、物流業界の今後に大きな影響を与えかねない裁判例が出されました。
横浜地裁相模原支部平成26年4月24日判決は、運転手が荷積みや荷降ろしのために出荷場や配送先等で待機している時間(「手待ち時間」といいます。)は、たとえ当該時間中にトイレに行く、買い物に行く等してトラックを離れる時間があったとしても、これを休憩時間とすることは相当でなく、当該事案における手待ち時間を実作業時間(労働時間)として扱う旨判示し、労働時間に算入していなかった手待ち時間につき未払いの割増賃金があるとして、その支払い等を命じました。
その理由として、運転手は、出荷場や配送先において、入場のための行列待ちや荷物の温度管理等でトラックを運転し又は管理しなければならず、トラックを容易に離れることができないうえ、荷積み等の際に使用者又は荷主の指示を受ければ速やかにこれに従って作業しなければならず、指示待ちのために携帯電話を手放すことができない等という労働実態から、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるということを挙げています。
本裁判例以前より、判例上、「労働時間」とは「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい、労働時間に該当するかは労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれているか否かにより客観的に定まるものとされています(最高裁平成12年3月9日判決)。本裁判例も、当該事案における運転手の手待ち時間が業務に従事しているといえるか、業務従事のために待機しているといえるのか等という観点から客観的に判断したものと考えられます。
もっとも、本裁判例によって、あらゆる手待ち時間が労働時間にあたると判断されたわけではありません。本裁判例によっても、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれたものとはいえない態様、例えば、「荷積み作業は14時から開始するので待機場所到着時から13時50分までを休憩時間とします。13時50分には集荷場付近で待機していてください。」というように、運転手の自由に利用できる時間であることを明らかにし、トラックから離れてよいことを明らかにする形で指示すれば、手待ち時間を休憩時間とすることができる可能性もあると考えられます。
これまで、単に手待ち時間であるとの理由で労働時間から除外するという運用をしていた企業は、一度運転手の手待ち時間における労働実態を見直し、運転手による自由な時間利用が可能となっているか、確認されることをお勧めします。