皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
今回は、消費者契約法(以下「法」といいます。)のうち、契約内容自体を問題とするものについてお話します。
法は、契約内容自体に着目して、契約条項を無効とすることについて、大きく分けて以下の3つの類型を置いています。
① 事業者の損害賠償責任を全部または一部免除する条項の無効(法8条)
② 消費者の損害賠償責任を予定する条項の無効(法9条)
③ 消費者の利益を一方的に害する条項の無効(法10条)
今回は、①について説明します。
法8条は、以下の5つの条項を原則として無効とする旨規定しています(なお、(5)については、法8条2項において例外規定が設けられています。)。
(1)事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
(2)事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
(3)消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
(4)消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項
(5)消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
基本的には、契約の履行それ自体あるいは契約の履行に関連した行為によって消費者に損害を与えた場合に、事業者の損害賠償責任の全部または一部を免除する条項を無効とする旨が規定されています。
事業者の側としては、万が一の事態に備えて、こういった損害賠償責任を免除する旨の条項を含めたいところではありますが、事業者側の落ち度によって消費者に不利益を与えた場合にこれを受忍させる理由はないとの法の考えから、こういった条項を含めることは難しくなりました。
事業者の側としては、こういった損害賠償リスクを回避するには、契約によるリスク回避ではなく、従業員の教育等、そもそもこういった損害賠償を請求されるような事態になるべく陥らないように尽力することが肝要です。また、法としても事業者側がこういった事態に陥らないよう尽力することを期待して、こういった条文を設けたという側面もあるのではないかと考えられます。
次回は、②についてお話します。