こんにちは。今回は、特許権の基本的なお話をしたいと思います。
特許権とは、知的財産権の一つです。知的財産とは、発明、考案、意匠、商標、著作物などの総称であり、知的財産権とは、知的財産が何らかの形で権利化したものを意味します。特許権のほかには、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などがあります。商標権侵害では、「iPad」商標権を主張している中国のIT企業がアップル社に対して、中国国内での販売差し止めを求めた裁判が記憶に新しいと思います。
基本的に、技術の開発には、多額の開発費がかかります。例えば、医薬品の開発についてみてみると、日本の製薬会社が一つの薬を開発して厚生労働省の承認を受け、市場に出すまでの平均期間は約9年で、費用は484億円かかるとのデータもあります。もし、特許制度がなければ、最初に開発した会社は、開発費用を回収できないことになり、技術の開発を断念することになるでしょう。したがって、特許制度とは、技術の発展・進歩のために、必要な制度であるといえます。ちなみに、人類の初飛行を成し遂しげたライト兄弟も、飛行機の基本技術について特許を取得しています。
では、そもそも特許権とは何なのでしょうか。特許の対象となるのは、「発明」です。特許法において、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と規定されています(特許法2条1項)。自然法則を利用して創作をしなければならないので、たとえば、自然法則そのものである、「万有引力の法則」は、「発明」にはあたらないことになります(「発見」であって「発明」ではないということです。)。また、新しいゲームのルールも、単なる取決めに過ぎず、自然法則を利用したとは言えず、「発明」にはあたらないことになります。もっとも、このゲームを盛り込んだゲームソフトであれば、ゲームソフトは物質的な要素があり、自然法則を利用しているといえるので、特許の対象となります。つまり、アイディアに留まる場合は、自然法則を利用していないので、「発明」とはいえないが、物質的な要素に工夫をこらしたアイディアならば「発明」に該当する可能性がでてくると言えそうです。
また、特許は、新規性(新しい発明であること)が認められなければなりません。そして、特許を取ろうとする技術内容が、論文や新聞、テレビのニュースやインターネット等、何らかの形で知られていたならば、新規性が否定されてしまいます。この際、開発した自らが、特許を出願する前に、内容を発表したり、製品を発売しても新規性が失われてしまうので、注意が必要です。