前回ご説明したように、為替デリバティブは、円安になった場合、輸入企業において為替リスクをヘッジできるため、その点においてはメリットのある商品といえました。

 しかし、現在問題となっている為替デリバティブは、円高になった場合に、企業側に損失が生じる仕組みで商品設計されてしまっていたのです。すなわち、企業は1ドルを100円で購入する権利を購入すると同時に、1ドルを100円で購入する義務を負う内容で為替デリバティブ取引を行う形で商品設計がなされている例が多くを占めます。

 この商品設計を検討すると、単純な疑問として、企業としてみれば、1ドルを100円で購入する権利だけを購入すれば良かったのでは?と思います。

 しかし、このように円安に備えて1ドルを100円で購入する権利も権利であるため、購入する際は料金を支払わなくてはなりません。一方、企業からすると、お金を支払ってまで円安リスクに備えて権利を購入することに躊躇があったと思います。

 そこで、生み出されたのが「ゼロコストオプション」です。どういったものかというと、企業が1ドルを100円で購入する権利を、1ドルを100円で購入する義務と一緒に購入すれば、購入する際の料金はかからないという商品です。

 このようにコストがかからないという商品の魅力から、円高になった場合に生じる損失というリスクが隠れてしまったのが、当時の状況だったのでしょう。為替相場も円安方向で動いていたので、現時点のような円高に伴うリスク説明も希薄になっていたかもしれません。

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