1 イントロ
企業間の取引で、取引先に信用不安が生じた場合、その売掛金等といった 債権回収に動かなければ、ということになります。
もっとも、万が一の対応を図ったつもりが、タイミングによってはよろしくない事態となるおそれがあります。
今回は債権回収における注意点について、簡単にご紹介します。
2 支払いを受けるにあたって
まずは支払期限に注意が必要です。まだ期限が到来していなければ、相手方は弁済を拒否することができます(これを「期限の利益」といいます。)が、契約書上で期限の利益の喪失事由を定めているケースもありますので、まずは契約書における返済条件を見返すのが無難です。
仮に期限の利益の問題をクリアできたとして、ない袖は触れない、すなわち支払うだけのキャッシュがない、というケースもありえます。お金が無理であれば、それに代わる物を差し出してもらう方法(これを「代物弁済」といいます。)もあります。ただし、この時出してもらった物の価値が支払うべき金額に比べて過大と評価されることがあります。もし、後からそのような事実が判明した場合、例えば相手方の会社が破産した際に、この代物弁済は否認(破産法160条参照)されて、原状回復を求められるおそれがあります。
したがって、取引先が誠実に返済してくれようとしている場合でも、それでよかったということではなく、後々まで問題が生じないか否かについて、支払いを受ける前に検討しておかなければなりません。取引先から新たな担保提供を受ける場合も同様です。
なお、先程の代物弁済のケースでいえば、査定を取るなりして当時の評価額を把握するように努めましょう。
3 最後に
取引先がいよいよ危なくなって、弁護士から通知が届いた時点ではもう約 定どおりの返済を受けても、後ほど破産手続が開始された際に偏頗弁済(破産法162条参照)と評価されて、管財人から返還を求められることになります。こうなってしまうと手のつけようがない、といった状態になってしまいますので、手続の帰趨を見守るしかありません。したがって、取引先がまだ比較的危なくない状態のうちに回収を図りましょう。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。