従業員や元従業員が会社の営業情報を用いて競業行為を開始した場合、会社としては、損害賠償を請求するだけでは足りず、営業情報を利用した競業行為の差し止めを求めたいところです。
会社の営業情報を保護する法律としては、不正競争防止法(以下「不競法」といいます。)があります。不競法は、2条4号から9号に「営業秘密」に関する競業行為を定め、2条6項に「営業秘密」の定義を定めています。そして、競業行為に該当すれば、当該行為の差し止めが認められます(不競法3条1項)。
「営業秘密」として保護されるためには、以下の3要件をみたす必要があります。
① 秘密として管理されていること(秘密管理性)
② 生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
③ 公然と知られていないこと(非公然性)
営業秘密を用いた競業行為との関係では、①の秘密管理性の要件が問題となることが多いようです(東京地裁平成13年8月27日判決)。
この秘密管理性は、会社が単に秘密の情報であると主観的に考えているだけでは足りず、客観的に秘密情報であると判断されるような態様で情報管理していることが重要です。
物理的な管理として、情報の閲覧にパスワードが設定されていたり、秘密文書であることが明示されていたりする必要があります。また、人的な管理としては、特定の人間だけがアクセスでき、その人間に対して秘密情報を漏洩しない旨の誓約書等を交わしておくことが必要です。
このような管理方法を取っていなかった場合、営業秘密とは認められず、営業情報を利用した競業行為の差し止めは認められないことになってしまいます。
弁護士 竹若暢彦