空前の「ゆるキャラ」「萌えキャラ」ブームの昨今、ホテル・旅館業界においても、企業や団体が独自にキャラクター(本稿では、絵を前提にします。)を作り、営業等に利用する例が増えています。今回は、架空のホテル「Ava」が、マスコットキャラクター「ALGo」を創作したという場合を想定して、ALGoの著作権は誰に帰属するのか、そして、それに関する留意点について解説します。

 著作権は、原則として著作物を創作した者に発生します。しかし、法が定める「職務著作」の要件を充たす場合、例外的に、創作者を使用して創作させた者に著作権が原始的に帰属します。本件ですと、ホテルAvaの従業員がALGoを創作し、かつ、その創作がAvaの創作意思(「発意」といいます。)および公表意思のもとで、Avaの業務として行われれば、これは職務著作に該当し、ALGoの著作権はAvaのものとなります。

 逆に言えば、従業員がAvaの施設内でALGoを作成してもAvaの発意に基づくものでなければ、あるいはAvaの業務とは何ら関わりなく創作されれば、ALGoの著作権は創作した従業員個人に帰属することになります。

 では、Avaが外部のクリエイターにALGoの創作を依頼した場合はどうでしょうか。この場合、ALGoの著作権は、原則通り創作者=外部のクリエイターに帰属します。外部者が創作する場合、通常、その創作行為に対して依頼者の指揮命令を及ぼすことができないため、Avaの業務として作成されたとは言えず、上記職務著作の要件を充足しないと考えられるからです。これは、実は創作への対価を支払っていても同様の解釈となります。そのため、せっかくお金を払って外注したのにALGoを自由に利用できない、という不合理な事態の発生しうるため、これを防ぐためには、Avaとクリエイターとの間で、ALGoの著作権の譲渡および著作者人格権の不行使等を定めた契約を締結する必要があります。

 最後に、ALGoがAvaの従業員と、従業員ではない第三者とで共同して創作された場合(Avaの従業員については職務著作の要件を充たすこととする)を考えてみましょう。この場合は、まず、完成した著作物について、Avaの従業員と第三者のそれぞれが担当して創作した部分を「分離して利用」できるかを検討する必要があります。例えば、Ava従業員がALGoの絵を、第三者がその絵に合うテーマ曲をそれぞれ作成した、というように、それぞれの著作物を分離して利用できれば、ALGoの絵の著作権は職務著作としてAvaに、楽曲の著作権は第三者に、それぞれ帰属します。

 一方、双方の創作性を組み合わせて1枚の絵を完成させるなど、双方の創作的部分が分離できない形でALGoが創作された場合、ALGoは、Avaと第三者の「共同著作物」となり、Avaと第三者のいずれもが著作権(共有著作権)を有することになります。この場合、ALGoの著作権は、全ての共有著作権者から合意が得られない限り行使できなくなります。もちろん、他の共有著作権者は、正当な理由なく合意を拒むことはできないとされてはいますが、紛争のきっかけとなりうることは否定できません。

 「共同著作物」になりうる著作物には、あらかじめ、少なくとも共有著作権者となる第三者との間で、著作権の自由な行使等を定めた契約を締結しておく必要があります。