以前、管理費を滞納している居住者に対して取りうる手段として、区分所有法59条の区分所有権の競売請求という手段を紹介しました。そして、この手段は、居住者からマンションの区分所有権を取り上げてしまう強力な手段であることも紹介しました。
区分所有法には、区分所有権の競売請求よりも緩やかな手段として、専有部分の使用禁止請求(区分所有法58条)という手段があります。では、管理費を滞納している居住者に対して、専有部分の使用禁止を請求することができるのでしょうか?
当然、より強力な手段である区分所有権の競売請求が認められるのであるから、管理費を滞納している居住者に対して、専有部分の使用禁止を請求することはできるように思えます。しかし、大阪高裁平成14年5月16日判決は、以下のような理由により、管理費の滞納者に対する専有部分の使用禁止請求を認めませんでした。
「専有部分の使用を禁止することにより、当該区分所有者が滞納管理費等を支払うようになるという関係にあるわけではなく、他方、その区分所有者は管理費等の滞納という形で共同の利益に反する行為をしているにすぎないのであるから、専有部分の使用を禁止しても、他の区分所有者に何らかの利益がもたらされるというわけでもない。そうすると、管理費等の滞納と専有部分の使用禁止とは関連性がないことは明らかであって、管理費等を滞納する区分所有者に対し専有部分の使用禁止を認めることはできない」
確かに、区分所有権の競売請求の場合は、それによって滞納管理費が回収できる可能性があるのに対し、専有部分の使用を禁止しても、それによって滞納管理費が回収できるわけではないので、高裁の判断もうなずける点はあります。
しかし、使用を禁止することにより事実上支払を促す効果もあるとは思うので、全く認めないのではなく、一定の条件を付して認めてもいいようにも思います。
弁護士 竹若暢彦