今回はタイトルと少しずれるかもしれませんが、売れ残ったマンションの管理費等をマンション分譲業者に請求することができるかが問題になった裁判例(昭和57年10月22日判決判タ487-106)をご紹介したいと思います。

 事案は、マンションの部屋数66戸のうち売却できたのは約30戸であり、未売却の部屋はマンション分譲業者が所有権者となっており、その未売却の部屋について、管理費が滞納されていたため、マンションの管理組合が、未売却の部屋の所有者であるマンション分譲業者に対し、区分所有法により定められた管理規約に基づいて滞納管理費を請求したという事案です。

 この裁判例では、マンション分譲業者から買主にマンションの部屋が売却されていない時点で、区分所有法の適用があるかということが争点になりました。

 裁判例は、

「区分所有法1条によれば、『一むねの建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居・店舗・事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。』旨規定し、右のごとき区分設定された建物については当然に区分所有法の適用があり、共用部分の共有関係及びその管理関係は不可避的に発生するものであると解される。」

と判示し、マンション分譲業者から買主にマンションの部屋が売却されていない時点でも、区分所有法の適用があるとして、管理組合の請求を認めました。

 この裁判例は、旧法のときのものですが、現行の区分所有法1条も全く同じ内容ですので、現在、同じような問題が生じた場合にも参考になる判例だと思います。

弁護士 竹若暢彦