マンションの共有部分に利益が生じた場合、マンションの居住者は共用部分の持ち分に応じて、その利益を取得することができるのでしょうか。例えば、マンションの空いている駐車場をマンションの居住者以外の者に貸して発生した賃料について、マンションの各居住者がその賃料を取得することができるかという問題です。

 まず、マンションの居住者は、専有部分の床面積の割合に従って共用部分の持分を有しています(区分所有法14条1項)。そして、その持分に応じて共用部分から生じる利益を収取することができます(同19条)。

 区分所有法19条は、「利益を収取する」と規定していますので、この規定を根拠にマンション居住者は帰属する利益の分配を求めることができそうです。

 しかし、千葉地裁平成8年9月4日判決は、

区分所有法においては,各区分所有者は,」「共有持分については,その分割又は解消が禁止され,専有部分と分離して処分することが禁止されるなど相互拘束を受ける関係にある。区分所有者らのこのような関係に照らすと,区分所有者らの間には一種の人的結合関係が性質上当然に成立しており,各区分所有者は,結合関係に必然的に伴う種々の団体的拘束を受けざるを得ない関係にあ」るとし、「共用部分から生じた利益は,いったん区分所有者らの合有的に帰属して団体の財産を構成し,区分所有者らの集会決議等により団体内において具体的にこれを区分所有者らに分配すべきこと並びにその金額及び時期が決定されて初めて各区分所有者らが具体的に行使できる権利としての収益金分配請求権が発生するものというべきである。」

として、区分所有者の共有部分から生じた利益の分配請求を棄却しました。

 つまり、各区分所有者であるマンションの居住者らは、共有部分については、民法上の組合のような関係にあって、持分を各人の意思で処分することはできず、マンションの居住者らの決定があってはじめて各マンション居住者が共用部分から生じた利益の分配を求めることができるということです。

 このように、共用部分の持分の法的な性格からして、マンションの居住者が共用部分から生じた利益について分配するよう請求することができないことは明らかですが、無用な紛争を避けるために、共用部分から生じた利益の処分の方法について、管理組合の決議によるという規定を規約に設けたほうが無難だと思います。

弁護士 竹若暢彦