前回の記事はこちら:不動産投資入門9(建物明渡請求)
6.弁護士の活用法
ファンド案件に投資しても、また自ら投資用不動産を購入しても、自ら弁護士を選んでこれを活用する機会は、ほとんどないと思います。ファンド案件はもとより、投資用不動産を購入した場合であっても、法律問題は賃貸管理業者に丸投げされているというのが実態だからです。
しかし、仕事に対する姿勢に問題がある弁護士が少なくありません[28]。よくある弁護士に対するクレームは、「仕事が遅い」、「連絡が取れない」、「報告が来ない」というものです。
このような傾向が生じてしまうのには理由があります。日本の多くの法律事務所には、会社のようなしっかりとした管理の仕組みがない。法律事務所は所属弁護士に対する管理を放棄し、各弁護士がマイペースで仕事をしているというのが現実です。どうしてこんなことになってしまうのかというと、弁護士という人種が基本的に他人から管理されることを嫌うからです[29]。でも、こういう弁護士に仕事を依頼してしまうと、みなさんの投資利回りに大きな悪影響を及ぼすことは必至です。
不動産訴訟を弁護士に依頼する場合、通常、賃貸管理業者が顧問弁護士を紹介しれくれますが、これも玉石混交です。「先代の社長の頃からの付き合い」とか「ゴルフ仲間」とかいう理由で顧問弁護士を決めている会社も少なくないからです。そして、付き合いが長いと、なかなか関係を切れないそうです。
したがって、万が一、みなさんの投資案件で法律問題が生じた場合に備え、身近に相談できる良い弁護士をご自分で確保する努力をされたほうが賢明だと思います。不動産訴訟をする場合、通常、賃貸管理業者が顧問弁護士を紹介しれくれますが、これも玉石混交です。
不動産投資をしているみなさんにとって、弁護士や法律事務所を選ぶポイントはいくつかあります。
まず第1に、不動産訴訟や債権回収の案件を多く手掛けている法律事務所の弁護士を見つけること。これは当然ですよね。不慣れな弁護士に頼めばパフォーマンスは大きく下がります。
第2に、案件を迅速に処理できるスキームを構築している法律事務所に依頼すること。これはかなり大事です。なぜならば、「忙しい」を理由に仕事を横に置いてしまう弁護士が多いからです。法律事務所が所属弁護士をしっかり管理していないとこれは難しい。管理不在だと、ほとんどの場合、頼んだ弁護士のマイペースに陥るからです。
第3に、担当弁護士との連絡が容易にとれ、かつ、報告もマメにくれる法律事務所や弁護士を見つけること。この点は、依頼する際に確認してみてください。「うるさそうなクライアント(依頼者)だなあ…」と不快な顔を見せたらやめておいたほうが無難です。
そして、最後に、セカンド・オピニオンを求められる弁護士も確保しておくと完璧です。法律事務所や弁護士によって、けっこう方針が違いうことも少なくありませんから。
[28] ジャーナリストの内藤あいさ氏は、「70歳以上のベテラン弁護士が、受任した案件を放ったらかしにして弁護士会から懲戒されている例がゴマンとある」と指摘する(内藤あいさ著「デキる弁護士、ダメな弁護士」53頁)。しかし、70歳以上の弁護士に限られないだろう。
[29] 弁護士の問題点に関しては、拙著「御社の顧問弁護士はなぜ役に立たないのか」(幻冬舎MC)に詳しい。