当法人では未払賃料に基づく建物明け渡しに関する案件が増加してきており、数多くの案件を訴訟まで持ち込み、明け渡しの断行まで実行しております。そこで、このような未払賃料に基づく建物明け渡しに関する最新の裁判実務についてお伝えしたいと思います。

 この種の案件については、まずは、どのくらいの期間の未払賃料があれば、訴訟提起を決断すべきかといった問題があります。

 そもそも、賃貸借契約は賃貸人と賃借人の信頼関係に基づく面があり、たとえ賃料が未払いであっても、その期間が短すぎる場合は未だ信頼関係が破壊されていないとして、賃貸借契約の解除は認められないと判断される可能性があります。

 そして、従来はそのような信頼関係の破壊が認められるためには最低限6ヶ月程度の未払賃料期間が必要である旨一般的に考えられ、訴訟提起も6ヶ月程度の未払賃料期間を確保していたケースも多く存在していたと思います。

 確かに、信頼関係の破壊の程度が大きな争点となり、最高裁まで争われるような場合であれば、敗訴リスクをヘッジする観点から6ヶ月程度の未払賃料期間を確保することにも一定の合理性があると思います。

 しかし、現在の裁判実務では最低限3ヶ月以上の未払賃料期間があれば、信頼関係の破壊が争点となることはほとんどなく、未払賃料に基づく賃貸借契約解除が認められ、建物明け渡しを実行できる場合がほとんどといった印象を受けています。

 そのため、現在の裁判実務においては、未払賃料期間を6ヶ月程度まで確保する必要性は低く、3ヶ月以上の未払賃料期間が確保できれば、訴訟提起の実行を検討しても良いと思います。