1 賃貸借契約と連帯保証人

 賃貸借契約においては、貸主は、借主に対して、支払能力のある人物を連帯保証人とすることが一般的に行われています。

 賃貸人は、連帯保証人を設定することで、例えば、賃借人自身は、引っ越したばかりで安定した収入が見込めなくとも、連帯保証人から賃料を回収することもできるなど、不良債権化を防ぐためには重要なことです。

 しかし、賃貸借契約には期間の定めがあることが通常であり、更新契約又は法定更新によって契約が継続することが多くあります。その際に、連帯保証人の責任は継続するのでしょうか。

2 裁判所の判断

 最高裁平成9年11月13日判決では、

「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである。」

とし、原則として、更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても、保証人は責任を負うとの判断を示しています。

 しかし、一方で、信義則に反すると認められる場合には、保証人に対する責任追及はできなくなることも示しています。

3 特段の事情について

 東京地裁平成10年12月28日判決は、多額の賃料を滞納しており、賃貸人としても更新に消極的であったにもかかわらず、法定更新の状態で賃貸借契約が継続した事案において、前記最高裁判決の示す特段の事情を認め、連帯保証人の責任を否定しました。

 前記の東京地裁の事案のような状態で相談に来られる例が良くあります。未払賃料がありつつも、契約を解除して明渡しを求めるまでには至らず、一方で、更新契約もできないまま法定更新の状態になってしまう貸主は多いと思います。

 しかし、未払賃料が溜まっている状態で更新する場合には、連帯保証人の責任が追及できなくなる可能性があります。

 未払賃料が溜まっている状態で賃貸借契約の更新を迎えた場合には、更新を迎えたことを機会として、連帯保証人にも説明のうえ、更新時に連帯保証人に未払賃料を解消してもらうか、連帯保証を継続するか選択させるなど工夫が必要になるでしょう。

 そして、連帯保証人からの回収も困難である場合には、賃貸借契約の解除も含めて、今後の契約をどう継続していくのか検討する必要があると思います。