今回から、何回かに分けて債権回収についてご説明していきたいと思います。
債権回収の事案を数多く手がけてきますと、一言で債権回収といっても、債権回収の具体的な性質、内容に基づき、債権回収に対する基本的なスタンスを大きく分ける必要があるということを実感しています。

内容的には、大きく二つに分けることができ、具体的には、
(1) 債権成立に支障がない債権(債権回収しやすい債権)か、
(2) 債権成立に支障がある債権(債権回収しにくい債権)
の二つに分けることができると思います。

 そこで、今回は、その区別基準について、ご説明したいと思います。

(1) 債権成立に支障がない債権(債権回収しやすい債権)について

 日本の民法の原則からすると、契約は原則として口頭すなわち口約束で成立します。

 例えば、この商品を明日1000円で売ります。それでは、明日その商品を1000円で買いますと口約束しただけで、売買契約は成立します。その時点で、明日その商品を1000円で売る義務が生じますし、1000円で買う義務が生じることになります。

 とはいえ、債権回収の実務では、契約書の存在、又は最低限請求書の存在が必要となります。これは、最終的に裁判を見据えた場合、その口約束で成立した売買契約を立証しなければならないという証拠による拘束が生じるためです。

 そのため、債権成立に支障がない債権、すなわち債権回収しやすい債権という視点からは、裁判を見据えた場合でも、立証しやすい債権として、契約書が存在することがとても重要となってきます。

 その上で、債権者、債務者、支払期日、支払金額が、一義的に明確であって、争いがない債権がこの債権成立に支障がない債権(債権回収しやすい債権)に分類できると考えています。

 このように、契約書もあり、支払期日も支払金額も明確であるにもかかわらず、支払期日を過ぎても支払いがなされていない債権は、債権成立に支障がない債権に分類できます。

 一方で、債権成立に支障がある債権は、この逆です。

(2) 債権成立に支障がある債権(債権回収しにくい債権)について

 債権成立に支障がある債権、すなわち債権回収しにくい債権は、契約書が存在していなかったり、請求書すら存在していなかったりするような債権であって、債権者、債務者、支払期日、支払金額が一義的に明確でない債権です。

 又は、相手方にもそれなりの言い分があって、その債権金額での債権について争いがあるような債権です。

 それゆえ、債権成立自体を相手方が争う等して、支払期日を過ぎてしまっているような債権がこの債権成立に支障がある債権に分類できると思います。

 以上のように、今回は債権回収事案をその性質、内容に基づいて二つに分類しました。このように債権回収事案もその性質、内容に基づいて二つに分けると、その性質、内容に応じて、相手方への督促方法も変わってくることになります。

 そこで、次回は、具体的な督促方法についてご説明させていただく予定です。