こんにちは。弁護士の吉成です。

 今回は、債権回収の確実性を高めるという観点から、契約締結段階で留意すべき事項についてお話ししたいと思います。

1 支払猶予期間の短期化

 当然のことながら、支払期限が先であればあるほど、取引先の財務状況悪化などのリスクが大きくなります。契約締結時においては、まず、支払期限を可能な限り早くしてもらうに要請すべきです。
 例えば、仮に、相手方がどうしても1ヶ月先でないと払えないという場合でも、半額については2週間後までに払うよう交渉するなどしてみるのが良いと思います。

2 契約書の作成

 売買を初め多くの契約においては、契約書の作成は契約成立の要件ではなく、口約束でも契約は成立します。
 しかし、そうであっても、契約書の作成は不可欠といっていいほど極めて重要です。
 契約締結後に契約内容等についての見解の相違が出てきたり、言った言わないの話となったりして、紛争が生じることも少なくありません。訴訟になった場合、契約書がないと厳しい場合が多いです。

 ただし、適切な内容の契約書でなければ効果は激減します。そこで、以下の点に留意すべきです。

(1) 一般的留意点

・ 契約の内容を正確に明記する。

* 一般に出回っている書式をそのまま流用するだけだと、個々の契約の実態にそぐわない場合もあるので、重要な契約については特に弁護士に作成させたりチェックを受けたりすることをお勧めします。

・ 多義的な文言の排除

・ 起こりうるトラブルを可能な限り想定して、これをケアする条項を設けること

(2) 債権回収に有効な条項

・ 期限の利益喪失条項

* 契約で履行期限が定められている場合、手形不渡り、債務不履行、信用不安等が生じた場合に、直ちに請求を可能とすることを定める条項

・ 遅延損害金条項

* 利息・損害金について定めがなければ、民事では5パーセント、商事では6パーセントにとどまる。比較的高い利息・損害金を定めることにより、期限通りに支払うインセンティブとする。

・ 契約解除条項

* 手形不渡り、債務不履行等の場合だけでなく、相手方に信用不安が生じたと自社が判断した場合に解除できることを明記。

・ 管轄条項

* 自社の本店所在地を管轄する裁判所を専属的な管轄裁判所とすることにより、訴訟になった場合のコストダウンを図る。

3  契約内容の公正証書化

 強制執行受諾条項付きの公正証書を作成しておけば、訴訟をしなくても、強制執行が可能となります。
 どうしても任意に支払をしない相手方から債権回収をするのは強制執行ということになりますが、訴訟は、短くても数ヶ月はかかりますし、長くなれば何年もかかることもあります。また、コストや労力も馬鹿になりません。
 そこで、強制執行受諾条項付きの公正証書を作成することはそうした時間、コスト、労力を省略できます。また、公正証書があること自体が、相手方に対する一種の威嚇となります。

 ただし、公正証書によって強制執行ができるのは、金銭や有価証券等に限られ、物の引渡しの強制執行はできません。

4 担保権の設定

 取引先の資金繰りが悪化した場合、多くの債権者が債権回収に殺到しますので、他の債権者と同じ立場では、回収がままならない場合も少なくありません。
 それゆえ、あらかじめ担保を取っておくことが重要となります。
 担保権というと、抵当権、質権といった法定の担保権が思い浮かぶと思いますが、それ以外にも、法定されていないものの判例上認められている担保権もあります。
 その代表が、譲渡担保というもので、例えば、取引先の工場内の機械設備、あるいは取引先の倉庫内の製品等を取引先に利用させたまま、担保にとるというものです。

 また、売掛債権等においては、商品について、代金支払いまでは所有権を売主に留保するという所有権留保というものもあります。

5 保証人

 保証人を設定することも有効な手段です。保証人にも請求できるということは当然メリットですが、保証人に迷惑をかけられないという債務者感情も支払を促すインセンティブになり得ます。
 なお、保証契約は、書面を作らなければ効力を生じません。

6 手形取引

 取引先に手形を振り出してもらうことも債権回収を確保する手段となります。
 手形の決済ができなければ、不渡り処分・銀行取引処分の制裁があるため、支払の確実性が高いからです。
 また、訴訟手続という観点でも、手形訴訟は、簡易で短期間で終わる手続になる点でメリットがあります。

以上

弁護士 吉成安友