今回からは、事業譲渡の活用による事業再生スキームについてご説明していきたいと考えています。第1回目の今回は、企業倒産と事業譲渡の関係についてご説明したいと思います。
以前は、事業譲渡や企業買収、合併といったM&Aは、好景気下における事業拡大の手法として捉えられていました。事業の拡大を狙う企業が、優良事業を展開している企業に打診して、当該事業を買収し事業の積極的拡大を図る手段の一つとして捉えられていました。
このように好景気下における事業拡大の一手法として捉えられていたため、企業倒産が相次ぐ不況下では、積極的な事業展開を図る企業自体が少ないため、事業譲渡を含むM&Aの件数は少ない傾向にあったといえます。
しかし、現在では、企業倒産が相次ぐ不況下においても、事業譲渡を含むM&Aも積極的に活用される傾向にあって、不況下であってもM&Aは急激に増加していると考えています。
その理由としては、再生可能性のある事業や優良事業といえる事業があれば、当該事業を含めて会社全体の倒産を図ったり、又は会社単体での再生を図ったりするよりも、当該事業の譲渡を図るスキームで再生を図った方が、結果として、経済的にも社会的にも良い結果が生まれやすい傾向にあるという認識が広まってきたことを挙げることができると思います。
そのため、事業譲渡を含むM&Aは、好景気下における事業拡大の手法として捉えられるばかりでなく、不況下における倒産企業の処理手法として、急速に認知される傾向にあるといえます。
そこで、事業が2つ以上存在し、その中の一つが今後も発展する可能性がある優良事業であれば、当該優良事業を倒産企業から取り出して、その存続を図るスキームを積極的に利用した方が良いと言えます。
また、優良な事業、優秀な人材、そして優良な顧客を存続させておくことができるため、社会的にも有意義なスキーム選択であるといえます。
このような理由から事業譲渡を行うとしても、具体的にどのような法務スキームを採用すべきかについて、検討する必要があります。
スキーム選択としては、大きく分けて、破産手続における事業譲渡と、民事再生手続における事業譲渡の二つのパターンがあります。
その上で、破産手続における事業譲渡については、事業譲渡の後で破産手続申立を行う方法と、破産手続申立後、破産手続内で事業譲渡を行う方法の二つに分けることができます。
次回は、このような方法の内、事業譲渡の後、破産手続申立を行うスキームを検討したいと思います。
以上