皆様、こんにちは。

1 イントロ

 このところ著作権の話題をご紹介させていただいておりますが、他人の著作物を使わせてもらうにはどのような方法があるのでしょうか。

2 著作権による保護の範囲の観点から

(1) 原則論からはじめますと、他人の物を勝手に使うことはできませんので、権利者の許可(「許諾」)を得る方法です。
 つまり、著作権者と話し合いをさせてもらって了解を得る、すなわち契約を結ぶという方法です。誰のどのような著作物をどのように使うのかきちんと話し合い後々のトラブルとならないよう取り決めておく必要があります。例えば、文化庁は著作権教育を進めており、契約のポイントについて解説してくださっているので参考になります。
 もっとも、契約したいと思っても、著作権者が誰なのか分からないという問題があります。以前ご紹介しましたように、今は著作権関係団体が窓口として多数存在していますので、まずは著作物の内容に応じて該当機関に問い合わせてみるとよろしいかと存じます。

(2) 次に、利用するために、というよりは、わざわざ了解を得なくてよいというケースがございます。
 これまた以前にご紹介いたしましたように、「私的利用」や「試験」での利用といった法律が「許諾」なくして著作物を使用することを許しているケースです。明確に著作権法の条文に沿った態様での利用であればよいのですが、グレーゾーンと感じられるような態様の場合には法解釈等を巡って裁判等の紛争が予想されるので、「条文があるから大丈夫!」と安心してしまうのは危険です。

(3) (2)とは別に、保護の対象から外れる理由として保護期間の経過という点が挙げられます。著作物は原則として著作者の生存年間及びその死後50年間保護されることになっています。例外として、例えば、映画は公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)というように期間の長さやカウントの開始時期に違いはあるものの、保護される期間には限度があります。すなわち、これらの保護期間を経過した著作物は「許諾」を得る必要はありません(ただし、例外の有無をきちんと調査しなければなりません。)。

(4) あとは、そもそも保護の対象でない著作物です。著作権法では「日本国民の著作物」「日本で最初に刊行された著作物」「条約によって保護の義務を負う外国の著作物」が保護の対象となっております(著作権法第6条)。もっとも、外国の著作物といっても何らかの条約に加盟していますので、具体的な検討は必要であるものの、保護対象外の著作物を見つけるのがなかなか難しいかもしれません。

3 利用できるようにするためには

 2では(1)の許諾を得る点以外は、調査して判断するレベルのものでした。
他に自ら働きかけをしていくべきものは著作権を譲渡してもらう方法、文化庁の裁定を得るといった手段があります。

 広い意味での著作権には著作者人格権といって、公表権、氏名表示権、同一性保持権といった著作者本人にのみ帰属する権利があります。これらの権利を除ければ、他者に譲り渡すことが可能です。例えば、複製権を譲り受けておけば、いちいち許諾を得ることなくなど大量にコピー・販売を行うことができるようになるわけです。ただし、勝手に内容を改変してしまうと同一性保持権の侵害になるので、注意しなければならないということになります。

 また、著作権関係団体等に問い合わせても著作者が不明であるような場合、文化庁長官からの裁定を受けることで文化庁に補償金(普通の契約でいうところの使用料に相当します)を供託して著作物を使用することが可能です(著作権法第67条)。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。