1. A社が、B社にC社を保証人とする債権を持っていたが、B社の破産手続き開始決定前にB社から弁済を受けていたとします。ところが、その後、B社は破産手続開始決定の申立てをし、B社の破産手続き開始決定後、同社の破産管財人から、当該弁済が偏頗行為否認の対象とされ、A社がB社から受けた給付を返還したとします。
この場合、A社は、C社に保証債務を請求できるのでしょうか。C社としては、A社が既に一旦弁済したのだからもはや債務を負わないと言いたいところです。一方で、A社としては、弁済として受領した給付を返還したのにC社に保証債務の履行を請求できないとすれば、不測の損害を受けるように思えます。

2. この点、破産法169条は、弁済その他の債務消滅に関する行為が偏頗行為の対象とされ、相手方が破産者から受けた給付を返還し、またはその価額を償還した場合には、相手方の債権は原状に復すると規定しています。
そして、相手方の債権の復活に伴って、当然に保証人や物的担保の責任も復活することになります。判例も、連帯保証人の債務の復活について、破産者が債権者に対し債務の弁済をした場合に、この弁済が否認され、その給付したものが破産財団に復帰したときには、それと共にさきにいったん消滅した連帯保証債務は当然復活するものと解するのが相当であると判示しています(最判昭和48.11.22民集27巻10号1435号)。
以上のように、弁済その他債務消滅に関する行為が否認され、相手方が受けた給付を返還し、またはその価額を償還したときには、保証人や物的担保の責任も復活することになります。 保証人なども、破産者の無資力の危険を引き受けているから、このような不利益は甘受すべきということです。
したがって、上記事例でも、A社は、C社に保証債務を請求できることになります。

3  もっとも、抵当権など物的担保が弁済にともなって登記が抹消された後に目的物が第三者に譲渡され、その登記がなされたが、当該弁済行為が否認された場合などには,どうなるかという問題があります。
この場合、争いはありますが、取引の安全の視点から第三者に不利益を及ぼすべきではなく、担保権を復活した相手方が登記なくして第三者に対抗できないことから、第三者は回復登記承諾義務を負わないと考えるのが多数説のようです。

以上