弁護士 金 崎 浩 之


産業再生機構の支援動向

1 支援対象企業41案件の動向
 ご存じの通り、産業再生機構は、2003年4月~2007年3月までの4年間、経営破綻した企業の再生を支援してきました。
 この産業再生機構の地方版とも呼ばれる「企業再生支援機構」が設立され、9月28日にその業務を開始しています。この新しい企業再生支援機構が、地方の中小・中堅企業の再建にどこまで貢献できるのか気になるところではありますよね。

 そこで、産業再生機構が対象企業の再建にどこまで役だったのか、その動向について、2009年10月5日付帝国タイムスがその動向調査結果を掲載していたので、その記事に基づき、同機構の業績を整理してみました。
 もちろん、産業再生機構と新しくできた企業再生支援機構とでは、取り扱う対象企業の規模も違うと思いますので、産業再生機構の業績結果がそのまま企業再生支援機構に当てはまるとは言えないと思いますが、参考にはなるかもしれません。

2 対象企業の規模と再生スキーム
 まず、同機構が扱った対象企業の規模から見てみましょう。
 産業再生機構と言うと、ダイエーやカネボウの再建で有名なので、超有名企業の再建のみを扱っていたと思われがちですが、対象企業41件のうち、その78%が未上場企業だそうです。
 もっとも、年商100億円台が43.9%ということなので、ある程度の中堅規模の企業が対象だったと言えそうです。それでも、年商100億円未満の企業が5割以上あるので、大企業だけが対象だったわけではなさそうです。

 対象となった業種は、ホテルが24.4%、卸売業が24.4%、製造業が17.1%となっており、この3業種だけで全体の65.9%に及びます。
 その後に、運輸業9.8%、不動産業7.3%、スーパー4.9%、百貨店4.9%と続きます。

 次に、再生スキームを見ると、68.3%がスポンサーに対する株式譲渡だったそうです。極めてシンプルなスキームですね。
 もっとも、譲渡先について見ると、再生ファンドへの株式譲渡が39%と最も多かったようです。
 その次に多かったのが事業会社への譲渡で29.3%。おろらく対象企業の属する業界のリーダー的企業が業務拡大のために買っているんだと思います。昔からある典型的な救済的M&Aのスキームです。

3 支援対象企業のその後
 さて、では産業再生機構が支援した企業はうまく生き残っているのでしょうか。ここからが気になるところです。
 前掲の帝国タイムスの調査によると、97.6%が現在でも営業を継続できているそうです。この数字はすごいですよ。ほとんど100%に近いですよね。以前、このブログでも民事再生企業の過去9年間の動向について書いたことがありますが、民事再生法の適用企業では約6割が再建に失敗していました。それとは比較にならないですよね。

 但し、この数字を鵜呑みにして、産業再生機構の支援を受けられれば、ほぼ100%再建できると評価してしまうのは早計にすぎると思います。
 まず、案件がそもそも4年間で41件しかないことです。年間でたかだか10件程度ですよ。産業再生機構が再建の目処が立つ対象企業を選り好みしてつまみ食いをした可能性は否めません。支援をお願い知れば、必ず同機構の支援を受けられるというものではありませんから、その41件という数字は慎重に考えなければなりません。
 次に、営業を継続している対象企業でさえ、損益面の改善は進んでいないという点が問題です。産業再生機構の支援を受けたのですから、とりあえずバランスシートが改善するのは当然です。しかし、損益面が改善していないとなると、根本的な改善にはならないはずです。結局、ガン細胞は切除したが、ガン細胞を生み出してしまう体質や生活習慣の改善ができていないのと同じだからです。営業を継続できている対象企業でさえ、支援当初の再生計画の売上高・営業利益目標を達成できていない企業が75%に及ぶそうです。実に4社のうち3社に相当します。

 現在も営業を継続できているとはいえ、本当に再建を果たせたのか、それとも延命策にすぎなかったのか、今後の動向を見守る必要がありそうです。

4 企業再生支援機構への示唆
 以上のとおり、産業再生機構の試験実績とその動向を分析した結果、次のようなことが言えそうです。

第1に、機構は慎重に対象企業を選ぶと思いますので、支援を受けられれば少なくともそれなりの延命策としては期待できそうです。しかし、逆に言えば、その陰で支援を受けられない多くの企業が泣いていることも意味しています。

第2に、貸借対照表の改善は期待できても、損益面の改善は容易ではないということです。企業再生支援機構とは言ってみても、経営のプロ集団ではありません。当然ですが、「お金の稼ぎ方」まで指南する能力はなさそうです。