今回も非公開会社を前提に、新株予約権(5)に引き続いて、新株予約権についてご説明したいと思います。今回は、取締役会決議に基づき新株予約権の発行を行う場合の留意点について、ご説明したいと思います。
(1) 特別利害関係人について
会社法上、取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、取締役会の決議に参加することはできないとされています。
これは、ある取締役個人の利益になるようなことを、取締役会で決定する場合、当該取締役は会社の利益よりも自己の利益を追求する可能性が高いとして、制度上、当該取締役が当該取締役会の決議に参加すること自体を排除し、会社側の利益を守っています。
加えて、判例上、特別利害関係のある取締役が取締役会の決議に参加しただけではなく、議長として議事を主宰した場合、当該決議を無効とした判例があります。
以上を前提にしますと、ある取締役に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与する場合も、当該取締役個人にとって利益になるのみならず、新株予約権に関する割当契約書を作成するなど取引行為の面が強いといえます。
そこで、念のため、当該取締役については、特別利害関係人として取扱い、当該取締役に新株予約権を割り当てる取締役会決議には参加させない方がよいと考えられます。
(2) 利益相反取引について
会社法上、取締役が自己又は第三者のために、会社と取引をしようとする場合、取締役会において、当該取引について重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないとされています。
これも、ある取締役が自己等のために会社と取引をしようとする場合、その取締役は会社の利益よりも自己の利益を追求する可能性が高いとして、制度上、取締役会自体の承認が必要として、会社側の利益を守っています。
以上を前提にしますと、ある取締役に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与する場合も、当該取締役個人にとって利益になるのみならず、新株予約権に関する割当契約書を作成するなど取引行為の面が強いといえます。
そこで、念のため、利益相反取引に該当するとして、利益相反取引に関する取締役会の承認を得ておいた方がよいと思います。
以上